第911話 羽柴秀吉
1621年8月15日 スロバキア王国
安土から徳川家康の死去の連絡が届いたその後、我が殿、羽柴秀吉は卒中で倒れた。
常陸様の学校で医術を学んだ医師達も首を振り、最期の時を静かに待つしかなかった。
バートリ・エルジェーベト陛下との間の御曹司若干8才と言う若さであったが、急ぎ元服を行い、名を「秀琴」と秀吉様は命名し筆を置いて気を失った。
「三成殿、すぐに常陸様にこのことを御連絡申し上げて、羽柴家の後継ぎの承認をいただいて下さい。スロバキア王国の次期王としてスロバキア王国で大切にお育ていたすとしたためめるです」
「はっ、すぐに電信いたします」
「三成殿、そなたは秀琴の守り役にいたします。しっかりとした武将に育てて下さい」
その話をしたとき、秀吉様はむくりと起き上がり
「三成・・・・・・秀琴の事は頼んだぞ・・・・・・」
と、言ったと思ったらそのまま前に倒れた。
「殿、殿、殿~」
・・・・・・享年85才
羽柴秀吉、一足軽から一国の長に上り詰めた波乱の人生に幕が下りた。
殿、秀琴様の事しかとお引き受けいたします。
きっと、国を治められる王に育つよう教育させていただきます。
先ずは、黒坂家から嫁を貰えないか考えなくては・・・・・・。
◆◇真琴視点◆◇
徳川家康の通夜に参列。
仮の葬儀はこのまま安土で行い、駿府に御遺体を移して本葬を行うとの事。
屋敷に戻り、庭に飛ぶ蛍を愛でながら静かに献盃をした。
「真琴様、真琴様の時代線では家康殿が征夷大将軍でしたね?」
と、茶々が聞いてきた。
「そうだ、俺が知る時代線だとあの明智光秀の謀反で信長様は討たれ、羽柴秀吉が明智光秀を討つ。その後、羽柴秀吉は関白まで上り詰めたあと病で亡くなり、徳川家康が勢力を拡大して征夷大将軍になって武蔵国の江戸に幕府を開く」
「そうですか・・・・・・そのような未来もある、いや、あったと言うものは不思議なものですね」
「その時代線では今と真逆でな、日本は国を閉ざして異国との貿易をほとんどしないのだ。そのせいで日本は時代に取り残され、江戸幕府開幕から約260年後弱々しい国として世界と渡り合わねばならなくなる。俺はそれが嫌でな、徳川家康にだけは天下は取らしたくはなかったのだ」
「それで、毛嫌いをなされていたのですね?」
「はははははっ、そう言うことだ。まぁ~人物としては別に嫌うほどの理由もなかったがな」
「あの時、渋い顔で茶飲んでいましたね」
と、思い出話をしていると、家臣がそっと手紙を届けてきた。
「そうか、羽柴秀吉も亡くなられたか。競い合うように死ぬとはまた不思議なものよの」
と、杯をスロバキア王国の方角に向け、飲み干した。
「跡目の義、承知した。いや・・・・・・信忠様のほうがスロバキア王国に近い、俺を通さず、直接そちらに使者を立てるように連絡してくれ」
「はっ、かしこまりました」
「真琴様、角が立たないようにの配慮ですね?」
「そうだな。任されてはいるが長ではない。皇帝を立てねば混乱するだけ。再び戦乱を起こしかねなくなるからな」
「真琴様、もう、潮時ですね」
「茶々もそう思うか?」
「はい、そろそろ」
と、二人で身の引き方のタイミングを考えていた。
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