第900話 鮟鱇のどぶ汁
茨城城は、相変わらずの美しさを保っていた。
「おっ、ちゃんと修繕しているね」
と、言うと高琴は
「父上様の権威の象徴ですから、綺麗に保たねば」
と、誇って胸を張って言っていっていた。
「父上様、鮟鱇のどぶ汁を用意してさせてあります。季節外れですが常陸の味を久々に味わっていただければ」
もう、桜も緑色、梅雨が目の前と言うのに、高琴は鮟鱇を用意してくれていた。
「はははははっ、ありがとう。だが、実はあちらでも鮟鱇は捕れるのだぞ。たまに食べている」
「えっ!そうなのですか?」
「意外であろう」
「海は一つと言う事ですか?」
「まぁ、そう言うことだ」
「メヒカリの唐揚げも用意しておるのですが、そちらも?」
「おっ、メヒカリ、あれはなかなか稀少だからな久々だ。ありがたくいただこう」
と、側室や子供達も一緒に食べると、
「ちちうえ様の故郷のあじなんですね」
と、菊理が言うと、天穂も
「おいしいです」
と、喜んでいた。
「これからは皆はこの常陸藩で育って貰う。第二の故郷となるだろう」
「ははうえ様のふるさと?」
と、神産が言う。
「佳代ちゃんもこの常陸藩の出身だからな、神産は生粋の茨城人だな、はははははっ」
「そっか、ここがちちうえ様やははうえ様が育ったのか~」
と、どぶ汁の入った椀の中を見ながら言っていた。
「母上達はそれぞれ仕事をして貰い不在の時も多い、だが、ここなら、お前達の兄姉、そしてその母親達も多くいる。義母様として甘えて良いのだからな。ここなら暗殺の心配も極めて薄い。好きなように遊べるぞ」
「うん、わかっております」
と、熱田。
熱田の母親のアセナは飛行機の操縦が上手いため、早くに操縦士としての仕事を任せてしまっているため不在が多く熱田は他の側室達に育てられている。
それは他の子も時として同じで、理解していた。
「梅子、桃子、特に頼んだぞ」
「はいのです」
「はっは、はいですです」
と、今でも変わらない口調の二人は快く了承してくれていた。
「熱田と神産は武蔵から剣術を学ぶようにすると良いだろう。城の道場に通うように」
「「はい、ちちうえ様」」
新免武蔵、史実では宮本武蔵の名になるのだが、この男は信琴の側近として働いている。
今は茨城城北東の補助となる高野城の城主として留守を守り、常陸藩で剣術指南の一人としても働いている。
柳生新陰流と実の父親の新免無二の影響を受けて育ち、やはり剣聖と呼べるほどの凄腕になっていると聞く。
いずれ手合わせをしたいものだ。
「真琴様、一度あの景色を見せてあげてはいかがでしょうか?」
「おっ、茶々、それは良いかも。皆で俺の自慢の景色を見に行こう。高琴、手配してくれ」
「はっ、父上様」
と、高琴に頼んだ。
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