第899話 発展する常陸藩
鹿島港から茨城城まで続く蒸気機関車が前回よりパワーアップしており、時速50キロほどのスピードで蒸気をモクモクと上げながら進んだ。
「高琴、紹介しておく。ヨーロッパで増えた家族だ」
と、みんなを紹介すると、
「久那之介高琴、みんなのお兄さんだよ、よろしくー」
と、あれ?高琴こんな歌のお兄さんみたいに爽やかなキャラクターだったんだっけ?と、言いたくなったが黙っておいた。
「私の子も連れてくればよろしかったですね」
「ん?あれ?誰の子?」
「町人の娘なのですが、嫁に迎えまして、今、4歳と2歳の娘がいるのですよ。父上様は何かと忙しいご様子で報告が遅れました。申し訳ありません」
と、頭を下げたが、
「はははははっ、確かに世界を飛び回っているから仕方がないことだよ。めでたいことなんだから謝る必要なんて微塵もないさ」
「そのお言葉が聞けて安堵いたしました」
「信琴のほうはどうなのだ?」
「はい、この度、義姉上様が御懐妊されまして」
「おっ、そりゃ~良かった」
信琴の嫁は前田利家の娘、決行して数年の月日が流れていたが子は出来ずにいた。
だが、このタイミングで子供か。
前田利家の魂が呼び寄せてくれたのかもしれないな。
前田利家の生まれ変わり?
ん~それはないか。
子供達は初めて乗る蒸気機関車に大騒ぎで喜んでいた。
初めて見る常陸の風景に目を輝かせながら。
「高琴、子供達をこちらに移住させるつもりなのだが」
「それは勿論歓迎いたします。茨城城は広うございますからなんの問題もございません」
「そう言ってくれると助かる。やはりこちらに任せておけば安全だからな」
「ん?父上様には最早敵などおられないかと」
「・・・・・・だからこそ、命を狙ってくる者もいるというもの」
時の権力者は常に暗殺との戦いとなる。
家族だって巻き添えになりかねない。
一番安全な地はやはり茨城城。
その為、今回連れてきたのだ。
「父上様、今度はどこを目指しているのですか?」
「南極大陸だ」
「あ~父上様がお作りになった地球儀の一番下の大地ですね?」
「大地と言うほど大地はむき出しにはなっていないけどな。氷に閉ざされた土地だよ」
「そんなところに行ってなにか良い物でもあるのですか?」
「ん~・・・・・・多様な生物くらいかな」
「父上様、先に言っておきます。変な生き物送って来ないで下さいね」
「うっ」
「父上様が先日送ってきた鳥、確かハシビロコウでしたね?あんな巨大な鳥持て余しますから」
「ハシビロコウさんは元気か?」
「えぇ、翼の羽を程々に整え遠くに飛べないようにして霞ヶ浦で飼っております。ジーとジーとジーと魚をただ待つ鳥など面白みもございません」
と、高琴の趣味には合わなかったのだろう。
少々ご立腹の様子だった。
「わかったわかった。生き物は程々にしておくから」
「程々・・・・・・?父上様、本当におやめ下さい」
「うん、南極大陸の生物で常陸の環境で生きられる生物はいないと思うから大丈夫だって」
と、高琴は疑いの眼差しで俺を見ていた。
そんな話をしていると、茨城城に到着した。
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