第897話 欧州イバラキ藩

 織田信長と一度別れ、欧州イバラキ島に向かった。


「ちちうえ、おかえりなさい」


と、子供達が出迎えてくれたので抱き上げた。


「みんな、お引っ越しをするぞ」


「え?」


と、困惑の声を出したのは、アセナだった。


「どうした?アセナ。引っ越しは嫌か?」


「あっ、うん、いや、違うの。ここから離れるんでしょ?」


「うん、俺の故郷にみんな移住して貰おうと思うのだが、嫌か?」


「日本の常陸藩だったよね?」


と、地図を見て考えていた。


「私はどこでも付いて行く」


と、ミライアはぼそりと言うと、オルショリャも


「わたくしだって常陸様と合体してどこまでもイクーーーー」


と、下ネタぽく言っていたのは聞き流した。


「おにいちゃん、お兄様に会ってきて良い?」


「アセナなら飛行機使えるから行き帰りで三泊もあれば大丈夫か?」


「うん、大丈夫。熱田も連れてって良い?」


「かまわないが、飛行機は大丈夫なのか?」


と、聞くと、


「父上さま、母上は父上さまが留守の間乗せてくれました」


と、両手を翼のように広げて走り回りながら言っていた。


「それなら構わない。こちらも出港の準備があるからその間に、会ってくると良い。別に今生の別れになるわけではないのだけどな」


と、言うと、深く頷きすぐに出発していった。


俺は、常陸藩に戻るための艦隊編制を指示した。


蒸気機関スクリュー式推進装置付機帆船型鉄甲単胴型戦艦(大)

旗艦・国之常立・黒坂真琴


蒸気機関スクリュー式推進装置付機帆船型鉄甲単胴型戦艦(中)

戦艦・新伊弉冉尊・艦長・お初


新型砲撃型潜水艦

潜水艦・ 新月夜 ・艦長・お江(潜水艦隊艦隊長)

潜水艦・新木花咲取・艦長・東住麻帆

潜水艦・新金毘羅 ・艦長・東住美帆


紅常陸隊を主要メンバーにしている艦を率いて、その他はシチリア島の真田幸村艦隊に合流を命じ、地中海の安全と秩序を保つために行動するように命令をだす。


頼んだ犬ぞりや防寒着はオーストラリアで合流の手はずを整える。


慌ただしく準備をしていると、アセナがイスタンブールから帰ってきて、皇帝アメフトスからの親書を持ってきた。


内容は、熱田に我が娘を嫁がせたいという申し出だった。


「アセナ、俺が常々言っているのはわかっているよな?」


「うん、好きな人と結婚するべきだって言うのでしょ?大丈夫、この二日間で意気投合した姪がいるの」


「熱田、本当か?」


と、聞くと照れながら逃げて行ってしまった。


「ならば、この親書の返書はカイロを通して送る。承ったと」


「ありがとう、おにいちゃん」


と、アセナは抱きついてきて喜んでいた。


従兄妹の結婚になるわけだが、まぁ、本人達が良いと言うのなら任せよう。


「だが、アセナ達も付いてきて貰うぞ。この島は完全に信長様にお渡しするのを決めているのだからな」


「うん、それはわかっているよ。それに一度おにいちゃんの故郷見てみたいし」


と、地球儀をクルクルと回しながら言っていた。


「ただし、子供達、母親達は俺の艦ではなく、分散して乗って貰う」


艦上な戦艦であろうと海難事故の可能性はあるため、分散させて乗る。


同じ船だと一度に多くの一族を失う可能性があるための選択。


それはわかっているようで、異論を唱える者はいなかった。


準備を整えて出発した。


この後、欧州イバラキ島は、森蘭丸に引き渡され『欧州イバラキ藩』が誕生した。

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