第896話 ポルトガル藩リスボン

 北極圏からヨーロッパに戻る途中、ポルトガル藩リスボンに寄港した。


ポルトガル藩リスボンは藩主、九鬼嘉隆の四男・九鬼主殿助が奉行を務め統治していた。


港は大西洋の中継拠点として大きく繁栄している。


その港には、最新鋭戦艦の国之常立と同型艦が停泊していた。


「ん?あれって信長様の船ではないですよね?」


「儂の船なら地中海に睨みをきかせるのに弥助に任せてあるが?」


最新鋭戦艦、蒸気機関スクリュー式推進装置付機帆船型鉄甲単胴型戦艦(大)は、早々何隻も次から次へと作れる船ではない。


船に近づきよく見ていると船には、『安土丸』と書かれ織田家の木瓜の旗とどこかで見たことがある馬印が掲げられていた。


「常陸、あれは信忠の馬印ぞ」


「え?なにも聞いてないんですけど」


そう、連絡手段はある。


モールス信号だが、全世界繋がっている。


「いつまでも迎えに来ないから私から来ましたぞ」


と、船の影から織田信忠が現れた。


「げっ、皇帝自ら来ちゃった?」


と、率直に心の声をそのまま言葉にしてしまうと、


「ふははははははは、相変わらず正直なお方だ。秀信ももう任せて良い年頃、常陸殿の御子息達もおられる。なんら問題はない」


「うちの息子達を頼りにしてくれるのはありがたいのですが、そんな知らせもなく突如現れるなんて。一度、常陸藩に帰るつもりだったのに」


「なんと!」


「次の信長様が行きたいところに行く準備で忙しいのですよ」


「父上様、どこに向かいたいと考えておられるのですか?」


と、言うと、織田信長は地球儀を指し示して、


「ここに行きたいのだ」


「はぁ?」


「信長様は南極点に足跡を残したいとお考えなのですよ」


「南極点?」


「ん~そう言う話は親子でして下さい。えっと、俺は一度、欧州イバラキ島に家族を迎えに行って、常陸藩に戻りますから、信長様はオーストラリアに行って待ってて貰って良いですね?桃信に連絡しておきますから」


「わかった。信忠、行くぞ」


「え?父上様、私もヨーロッパを見とおございます」


「ならば、好きにせい。常陸の家臣どもに連絡すれば案内などしてくれよう」


「信忠様、前田慶次が暇していますから、イタリア藩に向かえば大丈夫です」


二人合わせてお守りなどは避けたいが為に織田信忠にはイタリア行きを勧めた。


「えっと、私は世界を案内していただきたかったのですが」


「信忠様、南極、なんもないですよ。それよりイタリア藩のほうが間違いなく見所は多いですから。あっ、せっかくなのでオスマン帝国に行くと良いでしょう。我が義兄弟のアメフトス殿がもてなしてくれますぞ」


と、勧めるとしばらく考えたあと、地中海巡りを選んでくれた。


んな、同時に二人を南極大陸に連れて行ったら本能寺の京都のようだよ。


別々に行動してよね。


と、心で願いながら俺は一度、欧州イバラキ島に向かった。

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