第895話 織田信忠だって世界を巡りたい

「儂は、もう65を過ぎた、秀信、そちも、もう40。国を任せて良い歳だと思うがどうだ?」


「私などまだまだ若輩です」


「えぇい、儂はもう待てぬのじゃ、父上様ばかりあっちこっち行って。儂だって世界を巡りたいのじゃ」


「しかし、父上様」


「なにかあれば、黒坂の右大臣と下総守を頼ると良い。ほれ、近江守も香港にいるであろう。黒坂家の財力軍事力があれば盤石」


「そうですが、裏切るとは思わないのですか?」


「秀信、自身の嫁の家を疑うのか?」


「いえ、そうではありませんが・・・・・・」


「黒坂家はな、真琴殿と一緒なのだよ。ちっぽけな国などどうでも良いのだ」


「父上様、お言葉ではございますが、我が国は西の端から東の端までの広大な国」


「秀信、その考えが最早小さいのだ。真琴殿はこの地球そのものが小さき世界とお考えなのだ。息子どもも、その教育が伝わっているのか、野心などない。兎に角、全世界を豊かにしようと働いているではないか」


「義父様はなぜにその様なお方なのか、そろそろお聞かせ下さい。父上様や御祖父様がどのようにして助かったのか知りとうございます」


「・・・・・・うむ、そのことか。そのことは父上様の許しなくして語ることは出来ない。ただ、言えるのはあの時真琴殿が本能寺に現れなければ、織田家はどうなっていたかわからぬ」


「そのような大切な秘密が?」


「いずれ御本人に聞くと良いだろう。それより、秀信、あとのことは任せた。儂は父上様達のもとに向かって海を渡るぞ」


「くっ、わかりました。あとのことはお任せ下さい」


「うむ、それでいい。儂は世界を見に行ってくるぞ」


「お体には十分御注意下さい」

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