第892話 極臭は高天原への切符?
「臭い臭い臭いぬぉぉぉぉぉぉぉぉ、くせーーーーーーーーーー」
「本当、最近常陸は騒がしいの、少しは黙ってろ」
と、また織田信長に鉄扇で叩かれた。
目の前にある物体を目にして臭いと言わない方がおかしい。
茶々達など、逃げていってしまったのだから。
食いしん坊のお江でさえ・・・・・・。
今、目の前に置かれている物。
それは、キビヤック。
アザラシの処理した遺体に海鳥を入れて、土に埋め発酵させた食べ物と言って良いのかと疑問を持つ食べ物。
四大異臭食物とかに入っていたはずだ。
そんな物体がなぜにあるかというと、接岸して数日、オーロラを楽しんでいると、原住民のカラーリット民族が進物として届けてくれた。
アメリカ大陸への侵略が出来ない各国の行き場は俺の手付かずの北方探検で、島を見つければ次々に領有権を宣言した。
その中でも、イギリス帝国はノルウェー・アイスランド・グリーンランドを支配圏としている。
北方の支配者としての地位を固めていた。
だが、寒すぎて実際の支配は原住民がしている。
君臨するが統治せず。
ほぼ、うちの政策に近い。
その原住民達に、うちが敵対者ではなく歓迎するべき客人だと伝えてくれたことで、もてなし・・・・・・。
もてなしなのか?罰ゲームだろ。
原住民の中でも語学が堪能な者が、片言の英語で、どうぞどうぞと進めてくる料理。
生で、アザラシ食べるのもなかなかハードなのに、キビヤック。
「常陸、これはなんという食べ物だ」
「キビヤックって言うんですよ。失礼ですけど食べ物と認めるのには臭すぎる。本当、最初にこんな作り方した人、凄いと思うし、最初に食べた人を褒めてあげたいですよ」
と、言うと、それを現地語で族長らしい人に通訳しようとするので、慌てて止めた。
新鮮なアザラシ肉などはありがたかったのだが。
俺が慌てている間に織田信長は背を向けすぐに電子辞書で調べた。
すると、織田信長は顔を真っ青にしている。
「尻から吸うのか?」
「はい、尻から吸うんです。腐った海鳥の中身」
「なんで、こんな物を・・・・・・」
臭いより食べ方の方が織田信長的には衝撃だったようだ。
「野菜が摂取出来ないとビタミンと言う栄養素が不足します。ですから、生き物の内臓を食べて代わりに摂取するのですが、なんでもこれはビタミンが豊富だったはず」
「儂たちも、その、ビタミン不足になるのか?」
「うちは、ほら缶詰があるので、多少の航海くらいでは栄養不足にはなりませんよ」
「そうか・・・・・・、うむ、なら止めておこう」
「はい、遠慮しましょう」
と、伝えると、貴重な食糧の進物なのに受け入れて貰えなかったことが悲しいのだろう。
明らかに暗い顔となった。
「常陸、食べてさしあげろ」
「ノーーーーーーーーーーーー絶対むりむりむりむり、絶対むりーーーーーーーー」
「しかし、最高のもてなしなのだろ?」
「はい、おそらく」
「なら、せめて、一口食べてみせるのが武士としての礼儀」
「なら、信長様が食べて下さいよ」
「嫌じゃ」
「うわー、見たこともない物、食べたこともない物、それを体感したかったんでしょ?」
「うっ、だが、尻を吸うのは無理じゃ。しかも、腐った内臓など・・・・・・儂はこのアザラシ肉の刺身で満足じゃ」
と、赤々とした肉を醤油に漬けて食べてニコリとし
「美味いぞ」
と、通訳に伝えていた。
俺の目の前に置かれた一羽と海鳥・・・・・・。
いや、腐ったなにか。
「くぅ~もうやけだ」
尾羽をむしり取り、一気に口にくわえた。
・・・・・・。
一瞬で俺は高天原に意識は飛んだ。
御光さす神々が踊っていた。
踊っている。
踊っている。
おどって・・・・・・。
「真琴様、しっかりして下さい。真琴様、うわ、息くっさっ」
ぺちぺちと茶々に叩かれながら目を覚ますと、布団の上だった。
「危険すぎる。キビヤック、恐ろしい食べ物だ」
織田信長はと言うと、シロクマの毛皮を貰って上機嫌でいた。
俺も欲しいよ。
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