第885話 クリミア王国国王アンカラ
「く、ろ、さ、かーーーーーー!貴様、何をした。おのれーーーーーーーー」
と、正気を取り戻した家臣に裏切られ、取り押さえられているアナスタシア・リュリークは目から血を出しながら恐ろしい形相で睨んでいた。
「ふぅ~、効くかどうか怪しかったけど、流石に陰陽の力を高める五芒星の結界では異国の悪魔も魔力が弱まるんだね」
「おのれおのれおのれーーーーーーーーー!」
と、叫ぶ中、
「た・す・け・る・・・・・・おれ、アナスタシア・・・・・・あいしている・・・・・・」
と、縛られ発狂していたはずのアンカラが力を振り絞って、縄を無理矢理引きちぎり、抑えていた兵の首元に飛びつき噛み切ったと思えば、槍を奪って構えた。
人間と言う容姿をどこか超えようとしている。
獣のような物になり、グワァーグワァーと叫びに近い鳴き声のような息をしていた。
「愛の力・・・・・・オソロシア」
「常陸、なにを馬鹿な事を言っている。どうにかせい」
と、太刀を抜いて流石に構えた織田信長。
俺も抜刀する。
「ふふふふふっ、あのアガリアレプトの戦い以来、剣豪・柳生宗矩を相手に鍛え上げた俺の刀に向かって槍などで戦おうなど笑止」
あの悪魔と戦ったあと、あえて柳生宗矩を側に置き続けたのは、剣の稽古をするため。
本来なら、前田慶次や真田幸村のように大国の藩主にしたいところだったが。
俺が鍛えあげた左片手一本突き、それはまさにあの人気漫画の斉藤一の牙突を超える。
槍を手に突っ込んでくるアンカラ、その槍先にめがけて勢いよく左片手一本突きを繰り出すと、槍先から粉々に崩れ、持ち手まで到達しそうな瞬間床を後ろに蹴って、アンカラは離れた。
四つん這いになりながら、息をあらあらとしている。
「まるで、ライオンだな。ナイル川上流に行ったときに倒すのに苦労したわい」
と、聞いてない物騒なことを織田信長は口にしていた。
手の爪が剥がれるくらい床をガッチリと掴んでいるアンカラ、
「ふはははははははっ、よくぞそこまでなった。さあ、黒坂の首を噛み切ってあげなさい」
とアナスタシア・リュリークが叫んだその瞬間、一足飛びに飛びかかってきた。
納刀して構える。
「【鹿島神道流、秘技一之太刀・雷鳴】」
スババババババババーーーーーーー。
俺がお祖父様から免許皆伝の時に習った秘技、だがそれは形だけだった。
この時代に来て、安土の屋敷に襲撃に遭い使った技だったが、名前の意味がどうもわからないでいた。
だがそれは、剣技を高めることで、この技の真の名前の意味がようやくわかった。
それは抜刀術を繰り出すと空気も斬る。
その音が雷鳴のように響く。
【雷鳴】それは抜刀術の速さだけを表している物ではなかった。
空気を斬る。
それは鎌鼬
かまいたち
との、太刀の二重の剣撃。
よけれるはずもなく、アンカラは胴体からまっ二つになり床に勢いよく倒れた。
「あ・な・す・た・し・・・・・・あ」
声にならない声で、アンカラは絶命していた。
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