第877話 怒る蘭丸と兄弟杯

 伊達政宗もイスタンブールに到着すると、


「久しぶりにございます。義兄上様」


と、伊達政宗が船から降りてきた。


「よく来てくれた。だが、その呼び方はやめて」


と、言うと伊達政宗は笑っていた。


「なんですか?なんで伊達様が常陸様を兄と呼ぶのですか?」


と、珍しく蘭丸が声を荒げた。


「え?」


と、俺が驚くと、


「兄弟杯をいただいているので」


と、なぜか伊達政宗は誇らしげにしていた。


うっ?なんか競い合ってない?


「常陸様?・・・・・・私は本能寺からの付き合いだというのに、そのような物いただいていませんよ」


「って、だって蘭丸は上下の関係ないじゃん。俺は数少ない心許せる友達と思ってきたのに」


森三兄弟は本当に心許せる数少ない平等な関係だと思っている。

家臣である力丸にしてもそうだ。


「ですが・・・・・・」


と、言葉を濁す蘭丸を見て、茶々が


「女心と一緒なんですよ。真琴様」


と、笑っていた。


・・・・・・衆道と言う『同姓愛』と、言う言葉と一緒には出来ない少々複雑なものがあるのがこの時代ではあるが、俺にそのルートはない。これは絶対だ。


だが、それに近しいのが俺にとっては神に誓った兄弟杯。


「蘭丸、俺の杯を貰ってくれるか?五分と五分の兄弟杯だがな」


と、言うとつり上げた眉が下がって、


「はい、いただかせていただきます」


と、言うと、今度は伊達政宗が少々不機嫌になっていた。


こちらをたてればこちらはたたず?


争う事でもないはずなのに・・・・・・。


茶々は準備が良くすぐに『鹿島御神水仕立て御祓い済み御神酒・黒坂』を用意した。


「武甕槌神の大神に誓い森蘭丸を未来永劫兄弟とする」


「熱田神宮の大神に誓い黒坂真琴を未来永劫兄弟とする」


注がれた日本酒を飲み干しその杯を交換した。


杯を交換すると森蘭丸は満足した表情になっていた。

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