第874話 真琴の野望
「しかし、常陸、ずいぶんとじわりじわりと攻めているな。しかも、自らの軍を率いて。オスマン帝国がたてなおりつつある今、あとは戦力だけ貸して任せれば良いではないか?なにか狙いの物でもあるのか?」
と、二人で誰も入ってこられない茶室で織田信長が久々に茶を点ててくれた。
今日の味はとても若々しい茶葉の味が引き立つ美味しい茶だった。
「はははっ、流石に気がつきました?」
「あぁ、このような時は必ずどこかを取りたい時よの常陸」
と、簡易地図を懐から出して言う信長。
「クリミア半島で敵が反乱の狼煙を起こしてくれたのは好都合でした。抑えたかったんですよね、クリミア半島」
「ほほう、この土地が欲しかったのか?」
「土地が欲しいと言うより、味方が支配して欲しかったんですよ。しかも、できる限り親しい信頼出来る者が」
「だが、戦が起こった」
「だから、好機。自らが支配します」
「珍しいな、常陸にしては」
「俺が恐れている国って未来だと何カ国かあるわけで、その一つがロシア。東の海の玄関となるウラジオストクは最上義康が抑え、さらに樺太に我が息子がおります。これで、1年を通して凍らない東の海の押えは出来ています。ですが、西が抑えられていません。それがこのクリミア半島と言うわけです」
「なるほど、東西の主要とする港を抑えてしまえば、戦艦の行き来が自由に出来なくなるな」
「そうなんですよね。俺のいた未来でもロシアって、ここを抑えたくて結構無理するので」
「ぬははははははははははははっ、常陸が今まで積極的にロシアの娘を側室にしなかったのはロシアと友好な同盟にはせず、反逆の狼煙をあげるのを待っていたわけか?」
「ん~そこまでは考えてはいませんでしたよ。ただ、今回は良い方に転んでくれて、予想もしなかった者が乱を起こしてくれましたけどね。それに清帝国もそれに加担したことで攻める口実が出来たのは良い誤算でしたけどね」
「常陸、この戦いが終わるとき間違いなく、常陸は世界の覇者よ」
「勘違いしないで下さい。俺は信長様に世界の覇者を名乗って欲しいのですから」
「ぬははははははははははははっ、儂が世界の覇者か?己はあくまでも儂を担ぎ上げていたいのだな?」
「はい、俺が神輿に乗るより信長様が乗っていたほうが、元々の日本に帰ったときに住みにくくなりませんから」
「そうか、いずれは茨城に帰りたいというわけか?」
「故郷ですから」
「儂はもっともっといろいろ世界を見たいがな」
「はいはい、わかってますよ。この戦いが終わったら案内しますよ。世界のどこにでも」
と、言うとその時を楽しみにしているのか、織田信長は電子辞書とにらめっこをしていた。
あぁ、次はどこに行かされるんだろうな?
寒いところは嫌だな、などと俺は考えていた。
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