第871話 サムスン港
敵は飛行機からの爆撃に怯え、また、海からの支援も受けられずに戦車で港を囲み砲撃の準備を整えると、敵兵達は次々と大型帆船の戦艦で逃げ出していた。
うちから見れば旧式の船、取り逃がしてもなんら問題がないだろう。
逃げ出している兵まで殺す事は御大将の戦い方とは違う。
追い打ちをしたいというシュピリッツァを止め、逃げ出す猶予を三日ほど与えた。
三日後、城門を砲撃して城塞港になだれ込むと、兵士はほとんどおらず、飢えや病気で弱っている民達が、異国の言葉で、
『殺さないでくれ』
『私達は戦争には関係ないです』
『どうか命だけは助けてくれ』
などと、必死になり頼んできていた。
敵が無理矢理あちらこちらから集めてきた者達らしい。
「残存兵の捕縛を命じる。そして、炊き出しを行い民達の飢えを救う。また、薬も与えよ」
「殿、その様な事をいたしたら我々は進軍を続けるのに、兵糧が足りなくなりますが」
「仕方あるまい。今は民達の命、御大将も間違いなく救護を優先するはず。このことを御大将にお知らせして」
「はっ」
と、家臣は電令していた。
「我々にはわからん。進軍の先々の村からは搾取するもの」
シュピリッツァは言う。
「御大将は侵略をしているわけではない。この地もオスマン帝国に引き渡す。となれば、アメフトス陛下に協力して戦っている我々が民を苦しめるようなことはあってはならない」
「・・・・・・奪還した柳生宗矩様がここを支配するのではなく?」
「一時的に抑えるだけ。すぐにオスマン帝国に引き渡す。その証拠にほれ」
と、指さす先にオスマン帝国の旗と大日本合藩帝国の旗を並べて、サムスン港城塞の一番高い見張り台に掲げた。
「我々には理解できん」
と、大胸筋をピクピクと震わしていた。
御大将からの返事はやはり『民の救護を優先せよ。艦隊は黒海に入ったので食糧・薬を運ばせる』と、来た。
艦隊が黒海に入ったなら、この戦いもそう長くはないな。
そう思いながら黒海に沈む夕日を眺めてた。
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