第868話 コンスタンツァ占領戦

「前田様、敵の砦を目の前にしてなぜに攻めないのですか?」


コンスタンツァという敵の重要拠点の港を目前に囲むように陣をはって動こうとしない前田慶次様に聞く。

港なのだから、陸側を封鎖しても兵糧攻めの意味は一切ない。

なにを考えているのだ?


「このまま力攻めはたやすいがな。そんなことをすればこちらの兵にも犠牲が出る」


「それが戦という物にございましょう?」


「いや、黒坂家の戦いはそうではないのだ。如何にして新しい兵器を使い、兵を死なせないか、御大将はそれを重要視している。そして、また御大将は新しい兵器を手になさったそうだ」


「なら、電信でその応援を依頼したと言う事ですか?」


「まぁ、黙って見ておれ、明日の満月の夜に御大将は現れるそうな」


「・・・・・・しかし、イスタンブールとここまでの間にはまだ敵の砦があるはず」


「そうだな。だが、それをも無視出来るのが御大将」


黒坂常陸守様・・・・・・戦艦を造り、潜水艦なるものを造り、戦車なるものを造り・・・・・・。


海、陸を制した。


次は・・・・・・空か?


翌日の夜、それは突如として起きた。


コンスタンツァの砦が次々に爆煙を上げていた。


こちらは一切動いていない。


前田慶次様を見ると、明かりを月に向かって振っていた。


月を背景に映る黒い大きな鳥?


大きすぎる鳥2羽?


「前田様、あれは?」


「御大将と信長様よ。これからの戦いは空を制した者が勝つ時代。そろそろ俺の出番も終わりかな」


と、どことなく悲しげに槍を手に取り見ていた。


「さて、敵は混乱の渦中、総攻撃の太鼓を鳴らせ。突撃じゃ」


と、表情をがらりと変え総攻撃を命じると、砦の城門を大砲で破壊して、なだれ込んだ。


敵はどこからともわからぬ攻撃に大混乱の最中、そこに大軍が押し寄せると、次々に武器を捨て逃亡する者、また、狂人化し腕がなくなろうと噛んで突撃しようとする者など、地獄絵図状態だった。


「敵の大将は誰だ、どこだ、ぬっ、貴様、なかなか良い鎧を着けているな。名は何という」


と、サーベルを両手に持ち、頭から足の指の先まで銀色の甲冑で身を固めている者が現れた。


「スロバキア王国大臣石田三成だ」


と、常陸様からいただいた太刀を構える。


「ほほう、これはこれは逃げた大将ではないですか?兵を残して逃げた大将」


「なにを言う。そのような挑発にはのらぬぞ」


腸は煮えくりかえる思いだった。

私の大切な家臣、島左近・・・・・・そして家臣達・・・・・・。


「ぬははははははははははははっ、逃げた大将の首、ここで取らせて貰う」


「我が家臣の恨みを貴様に」


っと、驚きの早さ。

重厚な甲胄を着ているとは思えぬ漸撃を必死に太刀で受けることしか出来なかった。


「ほう、珍しい。我が剣で折れぬ刀など、さぞかし良い物。貴様を殺して奪ってくれる」


と、重い漸撃で後ろに転げ倒れた。


そこに飛びかかってくる敵。


・・・・・・悔しい、最早これまでか?政治ばかりに勤しみ、武術の稽古を疎かにしてきたツケが最後の最後に・・・・・・。


死を覚悟した瞬間、槍が後ろから飛んできた。


それを甲冑の胴に受け体勢を崩す敵。


「殿、大丈夫にございますか?」


「・・・・・・左近、左近ではないか?無事だったのか?」


「今はそれよりも眼前の敵」


「そうだな、手強いぞ」


「ここは拙者に」


と、立とうとしている敵に太刀を抜いて斬りかかると、左近の太刀を腕の籠手で受けはじき返した。


「おっと、これはこれはなんとも活きが良いじいさんが現れたな」


「誰がじいさんだ」


と、左近が再び太刀で斬りかかると、サーベルで勢いよくはじいた。


すると、左近の太刀は二つに折れた。


「ふははははははははははははっ、女王陛下からいただいた我が力の前に何人の剣も効かぬ、死ね」


と、斬りかってくる、


「左近、これを使え」


と、常陸様からいただいた太刀を投げ渡すと、


左近は受け取り、斬りかかる敵兵の開いた胴に斬りかかると、甲冑ごと真っ二つに斬った。


「・・・・・・まっ、まさか、この俺が・・・・・・」


と、小さく呟き倒れていた。


「左近、生きていたのか?」


「はっ、遅れて申し訳ございません。傷を癒やしていたので」


「しかし、周りは敵ばかりだったはず?」


「常陸様の学校の卒業生の家にかくまわれていました。村々にはそのような者がおり、村で技術や学問を教えており常陸様の恩恵に感謝している者は多く、武力で脅されていても実は味方だと言う者が」


「そうか、それは良かった」


「殿、残りの兵も倒して占領を」


と、太刀を返してきたので、私は腰から鞘を取り、左近に渡した。


「その太刀は左近が使ってこそ。私には重すぎる。常陸様からいただいた名刀、大切にいたせ」


「殿・・・・・・」


左近は、鞘を受け取り腰に装着するとその太刀で狂人と化して戦っている残りの兵を次々と斬っていた。


夜が明け、太陽が高々と上がる頃、コンスタンツァ港砦には梅鉢の家紋の旗と、大一大万大吉の旗が掲げられていた。


コンスタンツァ港砦占領戦、味方の被害は最小限の奇襲に近い占領戦となった。

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