第858話 幸村と宗矩

「本当に、御大将は恐ろしいの~」


と、幸村と二人月明かりで酒を酌み交わす。

イスタンブールの目と鼻の先のイズミットまで侵攻した。

御大将と太上皇陛下の新たな戦術『爆撃』の影響は大きく、敵は地上だけでなく上空も気にしないとならなくなり、眠れぬ日々から降参する者、脱走し許しをこうてくる者が多く現れた。

そして、馬やラクダ、ロバを必要としない菱形戦車は数で勝っていた敵を物ともしないで突き進んだ。

すべては御大将と佳代の方様がお作りになった物。

その力は絶大だった。


「御大将と佳代の方様の未来の知識は恐ろしい物だ。だが、平和利用すれば人は大きく発展し、豊かな暮らしが出来る。それは私が取り組んでいる農業改革で大きく成果が出ている」


「あぁ、そのような事は側で働いているのだから、わかっているさ。民が豊かになりひもじい思いをする者はあきらかに減っている」


御大将の秘密、『未来人』そのような話を酒を酌み交わしながら話せる人物は少ない。

幸村はシチリア島にいることが多く、たまにしか顔を合わせないので、このようなときにしか語れない。

もう一人いるが、そちらはイタリアから黒海へと進んでいる。


「しかし、御大将の未来は、どのような世界なのだろうか?」


「そうだな、御大将は自らは語られぬが、気にはなるな」


「あの見えている月だって、御大将は行った事があるやもしれぬぞ」


「はははははっ、まさか・・・・・・ん~・・・・・・ありそう・・・・・・」


「だろ?兎はいるのだろうか?」


「兎より『かぐや姫』だろう」


「あぁ、あのめんどくさい結婚の条件を出してきた姫か?」


「うむ、私はごめんこうむるがな」


「はははははっ、それは拙者も一緒よ」


「いつか、聞いてみようではないか?」


「そうだな、ゆっくり未来の話を聞かせて貰いたいものだ」


「さて、今日は酒はこのくらいで休むぞ」


と、幸村と最後の一杯を飲んで、休んだ。


明日はイスタンブールへの総攻撃。

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