第836話 黒坂琴彦とミコ2

 琴彦様・・・・・・爽やかな笑顔にたくましい筋肉、そして日焼けした肌・・・・・・格好いい。


私がそんな事、思っちゃ駄目よ。


私は常陸様の側室にならないとならないのだから・・・・・・。


と、次々と運ばれてくる木々の苗の育成に励んでいる。


「ミコ殿、少しは休んで下さい。あっ、ほら、ちゃんと日焼け防止着を着ないとその白い綺麗な肌が真っ赤になってしまいますよ」


と、気にかけてくれた。


「あっ、はい、すいません。私なんかのために・・・・・・」


と、わざわざ持ってきてくれた薄い布の羽織を肩にかけてくれる琴彦様。


「ミコ殿、その『私なんかの』と、言う口癖は止めたほうが良いですよ。あなたは美しい、そして、働き者。父上様も私も認めています。あなたは良い人だ。そんなあなたが自分自身を卑下しているのは気持ちよい物ではないです」


「え?私が美しい?」


「えぇ、間違いなく美しい。でなかったら、父上様もあなたに自身が描いた衣装なんて着せる遊びもしませんよ。私も何気にあの衣装を着ているあなたが・・・・・・好きです」


「え?えぇぇぇぇぇぇ?」


私は琴彦様の告白に戸惑い驚くしかなかった。

でも、私は駄目。

私は常陸様の側室になれと父に・・・・・・。


「父上様からは俺が側室に迎えてはどうかと言われました。父上様は、もう側室を迎える気はないようです。考えてみませんか?」


私は言葉を出せずにただ黙ってしまった。


私なんかが一目惚れした人と結婚して良いのだろうか?

私なんか・・・・・・。


「琴彦、ミコちゃん困っているからそこまで」


と、間に入ってきてくれたのはお江様だった。


「えっ、でも・・・・・・」


「ふふふふふっ、マコと違って気に入った娘には迫るんだね、琴彦は。でも、待つのも大事だよ」


「義母様がそう言うなら・・・・・・」


と、琴彦様は作業に戻って行った。


「ミコちゃん、マコはもう側室を持つつもりはないみたいだよ。だけどね、ロシアと縁を結ぶのは自分ではなくて息子の側室にと考えているの。だから、琴彦が気に入らなかったら他とお見合いになると思うよ。ミコちゃんも自身の感情で決めないと駄目。マコはそう言うの凄く気にする人だから」


と、教えてくれる。


黒坂常陸守真琴様・・・・・・女性を大事にしていると噂が高いがここまでとは。

私もそんな父親の下で育ったなら・・・・・・。


「ね~琴彦の事まんざらでもないんでしょ?」


と、聞いてくるお江様に静かにコクリと頷くと、


「まぁ~ゆっくりと決めると良いよ。琴彦はしばらくはここに留まらせるようマコに頼んでおくから」


と、笑っていた。

私自身が私の伴侶を決める決断をするための時間。

それを与えてくれる。

なんいて良い家族、人たちなんだろう。

父上様のお許しは出るのだろうか・・・・・・。

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