第835話 黒坂琴彦とミコ
「父上様、ミコをお借りしてもよろしいでしょうか?」
と、執務をしていると部屋に来た琴彦が唐突に頼み事をしてきた。
「ん?別に構わないがなんだ?気に入ったか?」
「いや、手を借りたいのです。木々の苗を栽培していますので、そちらにと」
「ふむふむ、一緒に働きたいのだな?」
と、ニヤリとして言うと、
「違います。ただ、農業経験者が欲しいだけです」
と、少々怒らせてしまった。
「ミコ自身に聞いてくれ。俺のほうでは異存はないし、側室にするつもりもないからな」
と、言うと、琴彦は力の入っていた肩がすーぅっと下がった感じがした。
「琴彦、気に入ったなら口説いてみてはどうだ?側室は持つべきだぞ。子は多い方が良い」
「父上様を見習えと?」
「はははははっ、俺までにはならなくて良いがな」
と、笑って返すと琴彦は苦笑いを見せていた。
ミコは必要とされるならなんの栽培でも構わないと樹木の苗栽培に移った。
働き者の良い娘だ。
「マコ~、もう床払いして良いよね?」
と、肋骨の痛みもなくなったお江が聞いてきた。
「痛みがなくなったなら良いだろう。小滝も大丈夫だと言うんだろ?」
「うん、小滝ちゃんの許しは貰ったよ。宗矩がいないんだもん早く復帰しないとね」
「そう焦らなくても良いのだが。茶々とお初が変りを務めてくれている」
「でも、忍びの差配まではいってないでしょ?」
忍びの家臣を裏でまとめているお江が言うと説得力がある。
基本的には柳生宗矩が束ねているが、特にくノ一はお江がまとめている。
「そうだな、少々気にはなることもあるし、頼むか」
「先ずは何を?」
「ミコの身辺をあらってくれ。琴彦か、もしくは誰か息子達の側室に考えているからな」
「へぇ~初姉上様が言っていたけど、本当にマコの側室にしないんだ?」
「だから、もう、それは良いって」
実際、まだ子が欲しければ、欧州イバラキ島に残している側室達なら出産には何ら問題ない歳。
その側室を差し置いてまで、新しい側室を迎えようとは考えてはいない。
いくら二次元から出てきたような美少女でも。
そこまで性欲の塊ではない。
「ミコちゃんの事は任せておいて」
と、お江は復帰した。
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