第770話 古代史とピラミッドの夜

 夜の砂漠は冷え込む、それはわかっていること。


だが、それでも俺はこのピラミッドと一緒に見たい物があった。


その為、スフィンクスを風よけにして野営の陣をはった。


「寒がりの常陸が寒さに堪えてでも見たい物はなんだ?」


と、織田信長


「信長様、俺は見たい物のためなら寒さも我慢しますよ」


と、言うと織田信長は、ニコリと笑い


「その言葉、忘れるなよ」


と、謎めいたことを言った。


日は完全に沈み見える満天の星空。


もう30年から見てきているが、こり星空一つでもこの時代に来たことの価値はあると思っている。


そして、見えてくる見つけやすい星座。


「あれです」


と、指さす方向にはオリオン座。


わかりやすいように、地面の砂に形を書く。


「おお、あれか、あれは日本の空で見つけやすい物だな」


「真琴様、あれって確か、オリオン座とか言っていましたよね?」


と、茶々、


「男利之介守琴

おりのすけもりこと

の幼名・男利王のあれだねマコ~」


と、お江は俺の背中に張り付きながら言う。お江はそれで暖めてくれている。


「あの星がどうしたって言うのよ。毎夜のように見えるじゃない」


と、お初。


「実は、あのオリオン座の三つ星が並んでいるでしょ、あれの位置関係と、ピラミッドの位置関係って一致するんだよ。上空から見るとかなり符合するんだよ」


「ほう、面白いな。天空を地面にかたどったわけか?」


「まぁ、一説なんですけどね。太古の昔の文明が、天体を地面に描くって面白いでしょ」


織田信長もウンウンと頷く。


「何のために?」


と、茶々


「一説にはピラミッドは王墓ではなく巨大なカレンダー説や、宇宙人への目印、なんていうとんでも説もあるんだけどね。冥界に魂を送るのに星空に願いを込めてなんて言うのが、有力な研究だったはず」


「私は宇宙人への印のほうが夢があって良いかも。かぐや姫に見せるとか、彦星と織り姫に見せるとか」


と、お初。


「ねぇ~マコ~お供え団子とか作らないの?」


と、お江はいつものままだった。


「まあ、偶然の一致だって言うのが一般的なんだけど、それではちょっとつまらないかな?ピラミッドの本来の意味も明確ではないし、建方だって未来ではわかっていない。それに、ピラミッドの中って複雑で、未来の技術で建てるのも容易ではないんだよ。それを古代に。そして、配置が似ているオリオン座、夢があって良いでしょ」


「太古にこれだけの巨石を動かすととはの~凄い物だ」


「あっ、伯父上様って、インカやアスティカの古代遺跡見てないんでしたっけ?」


と、お初、


「うむ、あの大陸でこのような物は見ていないぞ。あるのか?」


「あっ、そうでしたっけ?あっちも巨石文化があるんですよ。ほら、だから、うちは手伝って貰って、城の石垣立派にしたわけだし」


「そうか、あの城の石垣はその技術を使っているのか。うむ、そのインカの古代文明も行きたい所としてとどめておこう。常陸、良いな」


「はい、わかりましたよ。ほんと、信長様、元気ですよね」


と、笑い話をしながらピラミッドを見ながらの夜は更けていった。

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