第771話 ピラミッドの中に入る織田信長
「常陸、中に入るぞ」
翌朝、織田信長は動きやすいよう、作務衣姿に小太刀を携えていた。
「あっ、やはり入ります?」
「なんだ入りたくないのか?」
「まあ、ちょっと伝説がありまして俺みたいな能力者は、ちょっと。信長様が入りたいというなら止めはしませんし、霧隠才蔵と猿飛佐助を付けますが」
クフ王のピラミッドの中の大回廊、そこには都市伝説がある。
ナポレオン・ボナパルトは、ピラミッドの中に入った日から三日間、誰とも会おうとせず、そして、中で何があったのかを話そうとは、しなかったと言われている。
一説にはナポレオン・ボナパルトはそこで、自分自身の未来のすべてを見てしまったと言う。
そして、子供の頃に見ていた霊能力者も大回廊で嫌な気を感じ前に進まなかった。
観光で訪れた物の中には、大回廊から先に進むのを拒む者もいると言う都市伝説を目にしたことがある。
「なんだ?陰陽の能力で何か悪い物があるなら払うのが、常陸であろう」
「うっ、それを言われてしまうと・・・・・・」
「高い給金を出してきたのだ、案内人くらいせい」
「うっ、それを言われてしまうと・・・・・・わかりましたよ。わかりました。入りますよ。ただし、ちょっと待って下さいね」
クフ王のピラミッドの入り口に、祭壇を作って貰い
「高雨原に神留まり坐す皇が親神漏岐神漏美の命以て・・・・・・・・・・・・・・・・・・武甕雷男神の力を以て我々をお守りくださいますよう、かしこくかしこくお願い申し上げます」
と、祝詞を唱え祭壇に供えてある人形の紙をお守りとして、中に入る全員に渡した。
「マコ~大げさ~」
「真琴様、なにかおありなのですか?」
「ちょっと恐いわね」
と、お江達は言う。
「桜子、小滝、桃信、悪いが外で待っていてくれ。日暮れまでに出てこなかったら、救助隊を編制してくれ」
「父上様、そのような危険な場所なのですか?」
「いや、そうではないが頼んだぞ」
と、あとを頼むと待ちきれない織田信長は猿飛佐助に松明
たいまつ
を持たせて入っていった。
俺たちも、提灯をもって後に続いた。
狭い狭い石の壁の廊下を上る。
しばらく上ると、天井が開けた廊下に変わった。
「ここが大回廊か」
ぞわぞわと感じる嫌な気配。
織田信長もそれを感じたのか、天井を見上げて止まってしまった。
「信長様、ここは立ち止まらず進んで下さい。嫌な気を感じます」
「うっ、うむ、そうか、わかった」
と、進み出す。
「え~マコ~わかんないよ~」
と、お江、
「確かに何も感じませんが」
と、茶々、
「私は、ただただ見事な物だと思うけど。石造でこんな大回廊が中にあるなんて」
と、お初。
「なんだろうな~説明は難しいけど、これを建てた時のシャーマン、魔術師が行く手を遮るための何かをしたような・・・・・・兎に角、進んで」
と、三人を促す。
俺は、祝詞を唱えながら、天井を見ずに進んだ。
そして、開ける王の間。
「凄いの~、どうやって、これは組み合わさっているのだ?」
と、石積みの合間に出来た空間に織田信長はため息を漏らしていた。
「建築方法は不明で、しかも、この『王の間』の上には何層かの狭い空間があってそれで重力拡散して、『王の間』が潰れないよう細かな計算までされているのですよ」
「なに、この上にも部屋があるのか?」
「ほんと、狭い空間ですから、別に見て面白いとか、財宝や副葬品があるとかではないですからね」
と、織田信長の好奇心を抑えていると、
「マコ~お風呂~」
「お江、そこに入るな。それ棺桶だからな」
と、跨いで入ろうとしていた、お江を止める。
「えっ、これ棺桶なの?誰か入っていたの?」
と、慌てる、お江。
「盗掘で物は何もなかったから、入っていたかは知らないけど、一応それ棺桶、石棺だからな」
「このような所に埋葬されるとわ」
と、お初が感心して見ていると、茶々は、
「私は土に埋められたいですわ」
と、口にしていた。
茶々、俺が知る時間線では、『爆死』もしくは『焼死』で、遺体は残らなかったはず。
だが、それは言うのを止めておこう。
本人達が俺に自身の事を聞いてこないのだから、話すことはなく、また、明らかに変わった人生を歩んでいるのだから、その必要はない。
しばらく、王の間を見ると、
「うむ、満足だ。出るぞ」
と、織田信長。
また、もと来た道を戻って外に出ると、夕日が沈みかけていた。
桃信達は外で待っていた柳生宗矩を隊長として救助隊の準備をしているところだった。
中で時間の感覚は麻痺し、長時間経過してしまっていた。
不思議な空間・・・・・・。
「マコ~見てみて」
と、お江が入るときに俺が渡した人形の紙を見せてきた。
入るときには真っ白だった紙は、真っ黒になっていた。
全員のお守りが・・・・・・。
計り知れないパワーを持つピラミッド・・・・・・。
建設法や、利用目的、正確な建設時期、など解明される時は来るのだろうか?
世界ふしぎ発見。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます