第769話 織田信長とピラミッド

 砂嵐も三日間ほどで収まった。


ちょうど、イタリアの前田慶次とシチリアの真田幸村に頼んだ労働力も到着し、いよいよラクダに揺られながらピラミッドを目指した。


「うわっ、こいつ私を侮辱しているのか、こっち見てくっさい唾はきやがる」


と、お初は怒り、お江は巧みに躱し、茶々は優しく手懐けたのか大人しく乗せて貰っていた。


俺のラクダ・・・・・・、唾は吐かないが、休息が多いな。立ち止まってばかりだ。


馬に慣れていない桜子は俺の背で必死に捕まり


「恐いです、恐いです」


と、しばらく叫んでいた。


小滝は、桃信が背に乗せてくれている。


息子達、娘達は俺の側室達を義母として敬ってくれているので、なんら問題はない。


実の母が俺に付き添い海外に出向くと、側室達は我が子の如く、子供達を厳しく、優しく、そして分け隔てなく育ててくれた。


桃信も小滝を義母と敬い慕ってくれている。


織田信長が乗るラクダは・・・・・・?


ラクダが逆らおうとした瞬間、鋭い眼光を当てられ大人しくなっていた。


「乗せぬなら、殺してしまおう、ラクダ・・・・・・ん~語呂が悪いな」


と、冗談にならない冗談を言っていた。


進むにつれて大きくなってくるピラミッドの大きさに、みな感動をしている。


「御主人様、これ、人が作ったのですか?まるで山みたい。筑波山みたい」


と、後ろで桜子が感動しているので、


「ギザの三大ピラミッド、今から約4000年前に建てられたとされる物で、あの一番大きなのが、クフ王、そして少し小さいのがカフラー王、メンカフラー王の墓として建てられたと言われているけど、真相はわかっていない建造物なんだよ」


と、少し大きな声でみんなに説明すると、


「墓として建てたの?なんて顕示欲の強い人なのでしょう」


と、茶々が言うと、


「伯父上様なら作りかねない」


と、お初。


「なにかいったか?お初」


と、織田信長は前を少し離れているのに振り向いた。


「いえ、なんでも」


と、お初はごまかしていた。


「マコ~、大きな顔もあるよ~」


と、砂に埋もれたスフィンクスを指さして言う、お江。


「あれは、ライオンの身体と人間の顔を持つエジプト神話やギリシア神話に出てくる王を守る守護神なんだよ。下が大分埋まっているけど、犬が「伏せ」をしたような形になっているんだぞ」


と、言うと、


「あっ、マコ~それ掘り返すのに人足集めたの?」


「いや、あれは掘り返さない。いや、掘り返して足下も掘りたいのだけど、それは止めておくよ」


「え?どうしてですか?真琴様の知識では、あそこになにか埋まっているのがわかっているのでしょ?」


と、茶々が聞いてきた。


「うん、知っているけどね。それは今、掘り返しちゃうと保存が出来ないし、復元だって出来ない。専門家が成長して、そのような知識を持った者が出てきてから掘るべき物だから」


と、言うと、


「で、結局は何が埋まっているのよ」


と、お初。


「お初、茶々がいるとツンデレのツンレベルがあがるな。あそこには死者、王の魂を冥界へ送るためとされる船が埋まっているんだよ。木造の船。結構大きい船なんだけどね。流石に崩れてはいるけど、欠損していないから、専門家なら組み立て再現出来るんだよ。船で魂を送る文化ってどこにでもあるよな。ほら、茨城でも盆舟流すし」


茨城県北部や福島県南部で平成時代も続く伝統行事、新盆の盆舟流しを例えて言うと、


「そうですわね。なかなか面白い共通点が、ある物なんですね」


と、茶々。


「え~見たいよ、マコ~」


「まあまあまあまあ、ここは我慢して。凄い物を見せてあげるから」


と、言う。


そう、スフィンクスの足下に埋まっている太陽の船は、考古学的には勿論凄い物ではある。


凄腕船大工が家臣にいるから復元は、難しくないだろうが保存が問題だ。


吉村先生に頑張って貰うのが一番だ。


だが、エジプトと言ったら・・・・・・。


俺の目的は別だ。


ふふふふふっ。

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