第768話 アメフトスとヌルハチ
「単刀直入に、言います。ヌルハチが同盟を求めてきています」
俺の知る歴史線では、中国の国をまとめ『明』を倒し新しい国家『清』を作った男。
歴史線が大きく変わった今は『明』と覇権を握る戦いをしている。
オスマン帝国の支配圏は大きく、地中海からインドまで広大で、ヒマラヤ山脈を隔てて中国とは隣国になる。
「常陸様は『清』と『明』どちらに肩入れするのですか?私はそれに同調をいたそうかと」
「アメフトス殿、俺はどちらにも肩入れはしません。静観に近いと言えば近いかな」
「静観に近いけど違うと?」
「はい、あの広大な大地には大小様々な民族がいます。その民族を大切にしたいので、民族を大日本合藩帝国としては国として承認し、後ろ盾となって保護するよう、親しき者に指示してきたばかりなのです」
本音は中国という大国を作り上げないための策。
将来、日本の脅威となる国を作らせない策。
「なるほど、そのように考えておられましたか。私は常陸様と同調したいと常々思っております。ですので、接する領地を持つパシャにそのように命じます。大日本合藩帝国が承認した国は我が国も国として承認して同盟を結ばせていただきます」
「ありがとうございます」
アメフトスには、すでにうちの同盟国であるアスティカ帝国やインカ帝国、ハワイ王国とも同盟を結んで貰えるよう勧め、その同意を得た。
「しかし、本当に今回は突然の来訪、なにか目的がおありなんですよね?」
「ははははは、はい。とある墓を一つ掘りたく、実はお許しをいただこうと思っていたのですよ」
「もしや、ファラオの墓を?」
「はい、本当はいくつか掘り出したいのですが、今、掘り出してしまっても保存が難しいので、今回はそれは見送って、一つだけどうしても掘りたい墓があるので」
「見当は付いているのですか?広大な砂漠ですよ」
「えぇ、陰陽力で」
と、嘘をつく。
大好きな土曜の夜のクイズ番組で見て憧れの墓。
いろいろその書物は読んでいる。
なので、ほぼ正確な場所を知っている。
「う~、ファラオの墓・・・・・・呪いが・・・・・・」
「呪いは私が鎮めます。それに、人足はうちでそろえたので、ファラオの呪いを気にする人たちの手は必要とはしません」
「そこまでして、ファラオの宝が欲しいのですか?」
「いいえ、勘違いして貰っては困ります。その墓から見つかった物はすべてアメフトス殿にお渡しするというか、そこにそのままでも良いのです」
「え?いらないのに掘る?意味がわかりませんが」
「良いのです。気にしないで下さい」
と、俺は軽い笑みを浮かべながら返事を返した。
金銀財宝、ミイラと共に眠る副葬品、それは一目見たいが、別に我が物にするほど財政難ではない。
俺にはもっと欲しいものがある。
それを手にしたとき、考古学史に俺の名前は残る。
そうすれば、この時代線の未来では・・・・・・。
墓発掘の許可を貰い、その日一日、アメフトスといろいろ語り合うと、流石に幾日も首都を留守に出来ないと惜しみながら帰って行った。
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