第766話 カイロ大使公邸

 次の日、運河を使ってカイロを目指した。


運河からは小さな船に分乗し、ナイル川に入ると少し大きな蒸気機関船に乗り換えた。


蒸気機関船は、現在、前田慶次が支配しているイタリアで作った物とのこと。


ナイル川の河幅は広く、日本の川とは比べられない。


川の水は砂が多く混じっているようで茶色。


両岸には、田畑が見えている。


所々に町、建物が見えるのを眺めながらカイロを目指した。


12月と言う事もあり、砂漠の洗礼たる暑さは感じない。


20度くらいでちょうど良い。


「マコは冬場はここに住めば良いんじゃん」


と、お江が笑って言う。


「ははははは、確かに。夏はスロバキア王国の山間部、冬はカイロ、悪くはないな」


引っ越しを考えているので、気候は大切だ。


次の引越し先は必ずしも城ではなくても良い。


現在のうちの軍の戦力から考えれば、最早『城』は、軍事拠点としての意味は薄らいできている。


大火力あり過ぎ。


ロケット兵器も夢ではなくなってきているので。


そんな事を考えながら、憧れの地をずっと見ていると、カイロの町の港に接岸した。


・・・・・・。


・・・・・・。


・・・・・・。


皆が絶句してその一つの方向を見ていた。


距離があるからか、それとも砂埃のせいかボンヤリとシルエットだが見える巨大建造物。


ピラミッド。


「おぉ、あれがそうか?」


と、織田信長が指さすと


「ふぉっほほほほほ、いかにもあれがピラミッドに御座います」


と、ムリタファスが言う。


遠くからでも見える巨大ピラミッドは圧巻だった。


しばらく立ち止まって眺めていると、


「父上様、お早いお着きで」


と、桃信が出迎えに来てくれた。


「桃信、良い眺めだの」


「はい、初めて見たときは驚きましたが、今では少々飽きましたよ。茨城城から筑波山を見ているみたいな物です」


と、何ても贅沢な事を言う。


「皇帝陛下、先ずは大使公邸で一度休まれまして、明日、見に行きましょう」


と、桃信。


「いや、疲れなどない。見に行くぞ」


と、信長は言うが


「信長様、興奮は私も一緒ですが、今日は休みましょう。夕焼が照らすピラミッドを遠くから見るのもまた一興。あの地は、砂漠と言い大変乾燥し熱い地、旅の疲れをしっかりととって行きませんと」


と、信長をなだめた。


「うむ、仕方がない」


と、納得してくれたので大使館に向かった。


大使館は、二重の堀を持つ稜堡式の城、ちょうど五稜郭ほどの大きさで、真ん中の大きな建物はドーム型の丸い屋根を持つアラビアーンな本丸御殿、その脇には俺が奨励しているドーム型の家が連結して建てられていた。


本丸御殿に入ると、萌々な図柄のペルシャジュータンがお出迎えしてくれた。


ナイス、アメフトス。


信長は呆れていたが、中に通されると、伝統的なペルシャジュータンが敷かれていた。


「伯父上様、落ち着いて休めますわね」


と、お初と信長は笑っていた。


俺は全面、萌々ジュータンで良かったのに。

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