第760話 祝いの使者
今回、子供の誕生は大きな意味を持つ。
ミライアはイギリス帝国軍海軍提督から上り詰めた最高指揮官フランシス・ドレークの娘、アセナはオスマン帝国皇帝アメフトスの妹、オルショリャはスロバキア王国の娘、佳代ちゃんは幼なじみだから政治的意味合いは少ないが。
イギリス帝国からと、オスマン帝国からと、スロバキア王国からの祝いの使者が訪れた。
口々に俺との縁が深まったと喜びの文句ではあった。
その中で、オスマン帝国の使者、アセナが『じいや』と呼ぶムリタファス・ケラル・アダディリュクは気が早かった。
「常陸様、是非ともアセナ様の御子に我が孫娘、ひ孫娘を嫁がせたく」
「ちょいちょいちょいと待った。んな、生まれて間もない息子の許嫁の約束は出来ません。俺は、結婚は好きな者と結ばれるものだと常々思っていますから」
と、答えると、
「ふぉっふぉっふぉっ、では、熱田様の成長と会わせるように子や孫達に娘を次々産むようにさせますから、その中から」
「んな、無茶苦茶な事をしないで下さい。悪いですが、今は熱田には、まだ考えていません。それより、息子の琴彦が近々、大使としてカイロに入るので、息子の見合いをしていただければ」
「なんですと!桃信様が大使ではないのですか?」
「桃信は、琴彦が成長するまでのつなぎ、桃信には違う地での領主をさせようと決めているので」
と、言うと、ターバンの下から額に流れる汗を拭うムリタファス・ケラル・アダディリュク。
「桃信様にはアメフトス陛下の娘との見合いをと進めていたのに」
「え?アメフトス殿の娘?」
「はい、五人と見合いをさせるように事を進めていたのですが、これは困った。琴彦様に変えなくてわ」
「だったら、もういっその事、桃信と琴彦と合同見合いで良いですよ。ただし、好きになった者同士でない限り政略結婚は認めないので、無理強いは断固拒否すると、アメフトス殿にお伝え下さい」
「アメフトス陛下が、兄と慕う常陸様のお言葉しかと肝に銘じまして」
と、ムリタファス・ケラル・アダディリュクは帰って行った。
生まれたばかりの息子と政略結婚をしようとするって、どんだけだよ。と、思いながら、天守から外を見ると、織田信長はロケット発射台の拡張工事の陣頭指揮に立っていた。
うん、この城の名前変えようと決めた瞬間だった。
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