第758話 出産の祈りは多宗教

1613年8月22日


「あ~、なんてこうみんな一気に産気づくのかしら、忙しい、忙しい、煮沸消毒した布をいっぱい集めなさい。そこ~、しっかり手を洗って~!汚い手で触らない、綺麗な白衣に着替えて!茶々様組はミライア様、お江様組はアセナ様、オルショリャ様はお初様組で見て下さい。小滝様、八千様は私達と一緒に佳代様の出産を診ます」


と、松様が陣頭指揮に立っていてくれた。

松様も、佳代ちゃんから医術の基本的知識として衛生にする大切さを学んでいた。

学校の医術の長けた者をそれぞれの組に分かれさせる指示をする松様。

松様自身は、高齢出産となる佳代ちゃんに付いていた。


慌ただしくなる城内、うん、なんだか懐かしいな。


と、思いながら城内をうろうろしていると、


「えええい、邪魔、常陸様、ここは女の戦場、常陸様は祈りでもしていて下さい」


と、松様に怒られてしまった。


うん、これもなんだか懐かしい。


松様をこれ以上怒らすとケツ箒の刑にされそうだ。


それに俺が出来ることは何もない。


欧州イバラキ城に作られた神社、鹿島神宮分社欧州イバラキ島神社に入り、神主にお祓いをして貰うのと同時に、欧州寺で護摩焚きもして貰う。


俺は陰陽師として、鹿島神宮武甕雷男神の力を借りるが仏教への信仰心もある。


その為、島には寺も建立してある。


近江大津城時代に縁が出来た延暦寺から千日回峰行を済ませた僧侶をお迎えしている。


阿弥陀如来、薬師如来、大日如来、を中央に配置し、その両脇を不動明王と愛染明王を配置したお堂。


そこで赤赤に護摩焚きをして貰っている。


さらに、キリスト教会とイスラム教会でも神父と指導者が神にお祈りをしてくれていた。


さらにさらに、インカ帝国やアスティカ帝国の祭場では神官が鶏を生け贄にし祈り、オーストラリアの神官も祈りの踊りをしてくれていた。


多宗教国家を目指す俺は、この城は見本となるべく、多種多様な神への祈りの場があり、そこに代表者を置いている。


異質な光景と言えば異質だが、宗教を認め、文化を尊重すると言うことはこういうこと。


その手本を示している。


そのすべての祈りの場を巡っては頭を下げた。


信仰がなくても敬畏を表す。


信仰していない神にでも、敬畏を表すことは大切なこと。


それを文化として根付かせたいと考えている。


その為、模範になるようにこんな時でも行動する。


・・・・・・それを三周した頃、城内から産声が聞こえた。


「無事、生まれたか。良かった良かった。良かった」



「10.9.8.7.6.5.4.3.2.1.0.発射~~~~」


と、空気を読んでいるのか読んでいないのか、祝いの花火のつもりなのか、織田信長は産気づくギリギリに完成させていた第二弾ロケットを打ち上げていた。


今日の欧州イバラキ島は凄まじく文化が混ざり合った『カオス』と、言って良いだろう雰囲気だった。


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