第744話 四閣寺

 彩華から京の都に、とある物が出来たと聞かされ、予定にはしていなかったが、聖都である京の都に入京した。


秀信と彩華の一家は今は嵐山城を居城とし、聖都の繁栄と旧朝廷監視をしている。


彩華曰わく、


「父上様の念願の物が建立されましたよ」


と、言うだけだった。


急ぐ旅なので、少数精鋭の家臣と茶々と馬で移動する。


目的の地は平成時代には京都駅がある地。


・・・・・・見えてきたのは?・・・・・・え?鉄筋造り?いや違う。鉄の壁、鉄の屋根を持つ寺。


形は金閣寺や銀閣寺と同じ作りだが、色が違う。


それは、鉄閣寺だった。


まだ建立したばかりと言うことで錆はなく、鏡のように光を反射する寺はまぶしかった。


「確か、真琴様が義父様に以前、建立を申して出ていましたね」


と、茶々。


確かこの時代に来て、間もない頃だったはず。


その頃は、築城ラッシュと京の都を取り囲む門の建築で後回しにされた物だ。


うちの家臣が内々に住職に身分を明かして案内して貰うと、織田信長を皇帝とした為、無職になった底辺の公家の行先として信忠が各地に寺や神社の建立を推進して、そこの住職や神主へと据えたという。


鉄閣寺もその一つで、隣には不動明王を奉る本堂が併設されていた。


不動明王に京の都に妖魔が入らないことを願いお参りを済ませると、慌ただしく馬を走らせた。


次に目指すは上賀茂神社近くの京都の西側、平成時代は植物園があったあたりを目指すと、見えてきたのは酸化して茶色が緑色に少しずつ変わろうとし始めている寺、銅閣寺だった。


金閣寺、銀閣寺があるなら銅閣寺と鉄閣寺も建立したいと言ったのは、本当に自分自身が忘れるくらい昔のこと。


それが俺がヨーロッパに行っている間に作られていた。


南の金閣寺、北の銀閣寺、西の銅閣寺、東の鉄閣寺、金銀銅鉄がそろった。


銅閣寺の脇の本堂には、薬師如来が奉られていた。


それに手を合わせ、流行病が起きないことを祈った。


「真琴様、満足いたしました?」


「俺の領地には宝石を産出するところが多い。特にオーストラリアからはオパールが手に入る。茨城城近くにオパール閣寺を建立したい物だ」


と言うと、茶々の厳しい視線。


「品がありません。御自重下さい」


と、言われてしまう。


「なら、萌文化の象徴となる萌閣寺はどうだ?壁は一面美少女彫で漆塗の寺だ」


と、言うと茶々は一度眉間にしわを寄せにらんできたが、ポンっと手を叩くと、


「真琴様が将来、天寿を全うしたとき、そのような菩提寺を建てられるよう遺言を残しておいたらいかがですか?まぁ、ここまで来たのだから、私もそのお寺に入ってあげますから。お初は反対しそうですけどね」


と、笑っていた。


左甚五郎の弟子は孫弟子、ひ孫弟子まで広がっている。

さらにその継承は続くだろう。


その為、現実的に建立は不可能ではない。


「うん、それは良いかも。今から信琴に伝えておこう」


と言うと、茶々は、


「冗談で言ったのに」


と、額に手を当てていた。


とんぼ返りで、近江大津城に戻り一泊した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る