第738話 賤ヶ岳城

 賤ヶ岳城は建築当初の視察では質素な造りではあったが、山頂に建つ天守は漆黒の壁に虎と龍の金の装飾が輝かしい立派な城に進化していた。


その虎と龍に美少女がまたがっていたのは、もう想像の範囲内の事。


町は水路が幾重にも作られ小舟が賑やかに行き交い、金沢港経由で入ってくる蝦夷地の品々が各地へと運ばれていた。


俺が立案した琵琶湖を水路で結ぶ大都市計画、琵琶湖主要六城

安土城・織田信忠

近江大津城・黒坂信海

近江長浜城・森蘭丸の子が城代

大溝城・織田信澄の子が城代

牧野城・佐々成政の子が相続

賤ヶ岳城・前田利長


一局集中を避けるために立案したのだが、それは一定の成功を見せていた。


将来、史実の平成のようなゴチャクチャな大都市・東京都のようにならないように、また、災害が起きても琵琶湖東西南北が発展していれば助け合える。


道だって水路を利用する事で芸術性が欠け、美しくない道づくりとなる首都高の二の舞は避ける事が出来る。


将来首都高を作ろうとするなら、琵琶湖一周高速道路を作ればよく、東は大阪港、西は金沢港につなぐ道を作れば海からの物流にだってなんら問題ない。


そして、生活に欠かせない水は琵琶湖に豊富に存在する。


琵琶湖周辺は大きな地震はあるが津波の心配はなく、地震対策に集中すれば良い。


「兄上様は安土城常勤なので、変わりに兄上様の子、犬千代が挨拶致します」


と、賤ヶ岳城に着くと利常が言う。


「あれ?利長殿って子供出来なかったはず」


と、ポロッと口にしてしまうと茶々が咳払いをした。


「はははっ、母上様から聞いております。常陸様は不思議な言い回しをするが気にせず受け流せと。兄上様は長いこと子は出来ませんでしたが、常陸様の秘薬が樺太から送られてきたので、それを服薬していたら子宝に恵まれた次第に御座います」


・・・・・・小糸と小滝が作り上げた精力剤。

オットセイ、トド、熊の金玉や、にんにくなどの薬草や干し牡蠣の粉末などを混ぜた臭い臭い精力剤。


あの羽柴秀吉も子をもうけさせた秘薬は、前田利長もまた例外ではなく、織田信長の娘、永との間に一男二女が誕生したとのこと。


10歳になる犬千代が、大広間で挨拶をしてくれた。


「前田利長の嫡男、犬千代に御座います。常陸様には、よろしくお引き回しのほどを願い奉ります」


と、なんとも利発な子。


「これはこれは立派な挨拶で、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」


と、返事を返してあげた。


前田利常相続ルートがなくなったのを確信した。


「利常殿、前田家は安泰ですね」


「はい、ありがとうございます。犬千代も十歳になったので、これを機会に私は父上様の元に行きお手伝いをしようかと思っております」


「欧州に?それは良い。是非とも一緒に行きましょう。そのほうが安全で確実」


欧州を統治している大名は若干年齢が高すぎる。

そのため、次の代が必要。

ブリュッセルを統治している前田利家の跡継ぎが必要。

それが、名君として名の残る前田利常、願ったりかなったりだろう。


「よろしいので?」


「もちのろんです。しっかり安全に連れて行かないと、松様にケツ箒をくらいそうだ」


「あははははははははっ、確かに母上様ならやりそうですね」


そんな会話をしながら夕飯を皆で食べ翌朝、船で安土城を目指した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る