第736話 加賀と前田利常

 加賀の大野川の河口に作られた軍港を目指す。


金沢港、これは酒井港並みに強固な軍事施設を持つ港で、軍艦の停泊施設と造船所を持つ。


ここも複数の軍艦が配備されている。


幕府の要職である大老の前田利長の支配下であり、幕府の日本海側の水軍の拠点。


モールス信号通信機は配備されているので、入港は事前に知らせてはいるが、早めに浮上して旗印、馬印を掲げる。


前田利長は前田利家の嫡男、嫁が織田信長の娘なので、信長の養女となった茶々を正室にする俺とは義理の義理の兄弟になる。


俺の萌文化を大変好んでくれている人物の一人。


港が見え始めると、なんとも雅な船が迎えに来た。


蒸気機関外輪式中型船なのだが、真っ赤に染められ遠くからでも、その朱色に目が引きつけられる。


近づくその船を双眼鏡で見ていると、一緒に見ていた茶々が頭を抱えて


「噂には聞いてましたが、ここまで毒されていたとは・・・・・・」


との、言葉に俺もじっくり見る。


近づく船・・・・・・!?


外装の装飾。


朱色の中に光り輝く金の美少女達。


欄間のように彫られた装飾に、金箔が貼られた美少女達。


まさに、夢に見る装飾船。


肉眼で確認出来る程の距離になると、その異質な船の全容が見えた。


蒸気機関外輪式双胴船。


まるでどこかの遊覧船かのように、いや、遊園地にでも有りそうな船。


モールス信号機を積んでいるようで、『オムカエ 二 キマシタ』


と、受信したのを家臣が知らせてくれた。


その船について行き下船する。


「前田加賀守利長の弟の家老を勤めます、前田利常と申します」


と、何ともトレンディー俳優だった頃の唐沢さん・・・・・・若い前田利家を彷彿とさせる二十歳ほどの爽やかな青年が出迎えた。


「ご苦労様。なるほど、この船は利長殿の船ですね?」


と、聞くと笑顔で


「いいえ」


と、返された。


「「え?」」


と、茶々とハモって聞き返してしまうと


「私も萌美少女が大好きです。兄上様より私のほうが好きなくらいで。常陸様に会えて光栄にございます」


前田利常、史実では常に徳川幕府の強い警戒に晒されながらも巧みにかわし、外様大名では最高レベルの120万石の家領を保った。

内政において優れた治績を上げ、治水や農政事業(十村制、改作法)などを行い、「政治は一加賀、二土佐」と讃えられるほどの盤石の態勢を築き、また御細工所を設立するなど、美術・工芸・芸能等の産業や文化を積極的に保護・奨励した人物。


金沢文化を確固たる物にした二代藩主。


それ程有能な人物も萌美少女のファンになっていた。


ん~前田利家は、なんと思っているのだろうか?


松様は『おもしろい』と、萌美少女門をおもしろがっているから良いだろうが。


「今宵は金沢城で一晩過ごされて明日、賤ヶ岳城を経由して安土城に入られるよう手配しております」


と、言うので金沢城へと向かった。

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