第735話 酒田港城と最上義康
「御大将、帰って来ているとは噂には聞いてましたが、突然、海の中から現れるなんて、意表を突き過ぎてますよ」
と、次の日の昼頃、山形城から早馬を飛ばしてきた最上義康。
「はははははっ、すまぬな。樺太から直接来たからな。日本海を南に向かう途中、越前から上陸して安土城に登城の予定なのだ」
「その途中に我が領地に寄っていただけたのですね。これは嬉しい。いかがでしょう、以前好きだと父に語った事のある銀山温泉にでも行きませんか?案内いたします」
「それは次の機会だな。今回は早く欧州イバラキ城に戻りたい」
「戦にございますか?」
「戦と言えば戦だな。ただ、平和な喜ばしい戦だ」
と、言うと義康は不思議がった。
「側室達の出産が間近なのですよ」
と、茶々が言うと、義康は手を一つ大きくたたいて
「これはめでたい」
と、喜んでくれた。
「では、せめて今宵だけでも、荒巻鮭と燻製の鮭などありますゆえ、それでも食べて行ってください。そうそう、鮭の缶詰めも作り始めましたのでご試食をお願いします」
と、言う。
缶詰めは樺太だけではなく、日本各地で作られるようになっている。
「それはいただくとしよう。その前に話がある。軍備を整えてくれ」
「はっ、いつでも出陣は出来るようにはしてはおりますが、どちらへ?」
と、言うので、日本海の地図をだしウラジオストクを指差す。
「いよいよ、唐入り開始ですか?」
「いや、誤解するな。ウラジオストクの港と半島だけを占領する。ウラジオストクに巨城を築き上げる。その総大将を義康に任せる。信忠様のお許しが出次第、上杉、南部、伊達、などの援軍と共に占領して城を築いてくれ」
「私が総大将?上杉家や伊達家を差し置いて?」
「上杉家は海戦の経験はなく、伊達家の主力部隊は欧州だからな、任せられるのは義康だけだ。心配するな力丸を奉行として付け、信海を軍監とする」
「力丸殿と、信海様がいるなら安心です」
「信忠様には、その様に手配いただくよう頼むので、よろしく頼むぞ」
「はい、御大将」
その晩、出羽の銘酒と鮭三昧でもてなしを受け、翌日、安土城に登城するため越前を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます