第730話 ポキビ城視察その1
戦艦・日本武尊を氏琴に託し、付いてくるか悩んだ鶴美は結局、北条家先祖の菩提を弔うためと、氏琴の北条家での地位固めをするため、残念ながら樺太に残る道を選んだ。
「また、来るからな」
「はい、父上様。次も新しい缶詰めを食べていただくのに精進いたします」
と、氏琴に見送られながら樺太北西部のポキビ城に向かう。
海にはまだ流氷が残っていたが、潜水艦にはなんら問題なく進んだ。
氷の下を進む潜水艦。
うん、近い将来行きたい地へと行けそうだな。と、考えつつ、昼過ぎにはポキビ城の港に入港した。
ポキビ城は海からの侵略者への守りの要。
高石垣が組まれ、いくつもの砲台となる塔と、凍結に強い石瓦と鉛瓦で作られ壁は美しい白い海鼠壁を持つ三階建ての小さな天守を持つ城と発展していた。
天守の屋根には銅製と思われるアイヌ民族衣装の美少女が銀の槍を持って立っている。
避雷針としての役目の為、槍にから鎖が地上へと伸びていた。
港には小型蒸気機関外輪式警備船が五隻、中型船が二隻停泊している。
もちろん、連絡済みなので警戒なしに入港すると、守琴とトゥルックが出迎えた。
「ようこそ、おいで下さいました父上様?って、なんですか、その毛皮は?」
「あぁ、これか?守琴が寒がりの俺のために熊の毛皮で作ってくれたものだ。なんでも、脱色して黄色に仕立ててくれた。本物と間違われないようにとな。それに合わせて鶴美が赤い陣羽織を縫ってくれたのだ」
平成時代に具現化したら、絶対に舞浜あたりからキツいお仕置きが有りそうな毛皮の着ぐるみが完成し、それを着てポキビ城に上陸した。
茶々は、この毛皮をたいそう気に入り、小さな人形を作りたいと言う。
大丈夫なのだろうか?と、少々気にはなる。
気になりながら『プー』と、おならをした。
「マコトサマ おひさしぶりです」
と、トゥルックは金髪に白髪も混じりだしたのか益々幻想的なエルフのようになっていた。
「ひさびさだな。このような北の大地で皆息災で何よりだ。顔を見て安心した」
と、返事をすると、茶々が
「この方が、トゥルックですか?茶々です。よろしくお願いします」
と、挨拶をした。
「御正室様にそんな挨拶をされるなど、私のほうこそよろしくお願いします。挨拶に出向かねばて思っていたくらいですのに」
と、トゥルック。
「いや、何かと贈り物をいただきありがとうございます。アイヌ民の織物は頑丈で仕事着には重宝してます。大工衆や鍛冶衆に褒美の品にあげると喜ばれるんですよ」
と、茶々。
正室と側室のバトルがないのは茶々の心の深さを感じた。
「さぁ、城の中にどうぞ」
と、守琴に案内され入城した。
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