第725話 樺太島留多加港
まだ、春の訪れは先な雪の残る樺太島が見える。
「茶々あれが樺太島だ」
と、船首に並び指差して見せると、
「日本だと言うのに全く違った景色っとととと」
と、茶々は波の揺れによろめいたので、俺は後ろから抱きしめ支えてあげた。
「おっと、危ない」
すると、茶々は
「ふふふふふっ、なんか楽しいですわ」
と、両手を翼のようにあげ、まだ突き刺すほど寒い風を全身に受け、はしゃいでいた。
俺の頭の中では、セリー●・ディオンのあの感動的な音楽が流れている。
いや、戦艦・日本武尊は沈まないよ。
そんな柔な設計ではないからね。
と、一人ツッコミをした。
樺太島留多加港には、モールス信号で行く事は連絡済みなので、警戒される事なく、入港する。
出迎えには、鶴美と北条須久之介氏琴、俺の息子が待っていた。
何年も会っていなくてもわかる。
「父上様、よくぞ来てくれました。異国での活躍は耳に入っております」
「御主人様、ひさびさに温泉でしっぽりいたしましょ」
と、鶴美。
鶴美はお江に負けないくらいの甘えん坊。
それも何年たとうと変わらない。
「相変わらずですね、鶴美」
と、茶々があとから降りてきて声をかけると、鶴美は驚いていた。
「ありゃ、珍しい、今回は茶々様だけですか?」
「今回は、では有りません。これからは私はずっと真琴様と一緒に世界を巡ります」
「えっ?」
「茶々の留守居役は御役御免、常陸国は信琴に任せる事とした」
と、説明すると、鶴美は
「私も行きたいです。ですが、父の菩提も弔いたいし」
と、小さく呟く。
「父上様、このような所で立ち話もこれくらいにして、さあ、城へ。寒がりの父上様が凍死してしまいます」
と、氏琴。
皆の笑いを誘った。
樺太島留多加港は前回の視察から変わったのは、いくつものトンネル型倉庫が建ち並んでいる。
前回提案した倉庫だ。
積雪や風に強い形の円柱状を輪切りにし横にした形のトンネル型倉庫。
中には、様々な保存食、そして、様々な生物の毛皮が備蓄されていた。
春を迎えようとする中でも倉庫にはまだ余裕の食糧が保存されており、冬も困らず越せたのは想像出来た。
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