第718話 茨城城帰城

ゆっくりゆっくりと霞ヶ浦の北の陸地を進む蒸気機関車。


あまりにもゆっくりで馬で駆けた方が早いのでは?と、思うくらいにゆっくりと進んだ。


車窓から懐かしき景色をゆっくりと堪能するには良かったが、旅の疲れと揺れでうつらうつらとしていた。


ん?あれ?なんか懐かしい人の匂いがする気が・・・・・・。


「ふふふっ、お帰りなさいませ」


はっ、と、目が覚めると隣には茶々が座っていた。


「茶々、俺が驚かそうとしていたのに逆に俺が驚いちゃったじゃん」


「真琴様、今は通信機がありますから」


と、茶々の方が使いこなしていた。


「ただいま。茶々。迎えに来たよ」


と、言うと茶々は俺の左腕にしがみつき、


「はい。待っていました」


と、嬉しそうにしながらも涙をためていた。


「これからは一緒に世界を回ってくれるね?」


「はい、どこまででも行きとうございます。真琴様と同じ景色を見とうございます」


と、言ってくれる茶々の頭を撫でていると、後ろの座席から顔を出してきたお江。


「ただいま、茶々姉上様。やっと一緒にまた三姉妹そろえるね」


と、喜んでいた。


「あれ?お初は?」


「うん、欧州イバラキ城で側室達が妊娠していて、それを見守るって残ってくれているよ。元気だから大丈夫」


と、言うと、手の甲をひねられた。


「痛てててて」


「また、子供ですか?おめでたいですが、そろそろ御自重して下さい」


と、怒られてしまった。


「ハハハハハッ、そろそろな」


「そうです。御自身の体のことも考えないとならない歳になっているのですから。子作りも御自重して、政治も子に任せて少しはゆっくりして下さい」


「うん、次の世代に任せ始めないとは思っているぞ」


と、そんな会話をしていると懐かしき茨城城の萌門が見えてきていた。

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