第651話 ヴェネツィアの草

 モナコを砲撃した織田信長は、弾薬の補給に一度ジブラルタル城に戻っていった。


1609年が終わろうとしている頃に、ヴェネツィアに潜伏している草と呼ばれる忍びからローマ法王が避難してきたことと、蒸気機関鉄甲船を作り試験航行をしている事の連絡が入った。


少ない我が艦隊の船の情報から作り始めたのだろう。


何でも外輪式の推進装置の船という事なので、こちらが有利なのは揺るがない。


うちの船はもう一つ次の世代の船なのだから。


しかし、蒸気機関で潜水艦が進むように作られると厄介だ。


潜水艦を作り上げた天才発明家コルネリウス・ドレベルが厄介だな。


「コルネリウス・ドルベルを探し出し暗殺を命ずる」


俺が珍しく「暗殺」などと言う命令をすると、猿飛佐助が少々驚いていたが、すぐに配下に指示を出していた。


敵国がなりふり構わずになってきているのだから、こちらもそれなりに対応しなくてはと腹をくくった。


そこでかねてから予定していたバードリ・エルジェーベトにスロバキア国王を名乗らせ、亡命国家スロバキア臨時政府をジブラルタル城のすぐ近くのマラガに設置、その娘で俺の側室であるオルショリャ・エルジェーベトをスロバキア王国国土回復軍将軍の地位に就いて貰う。


俺はスロバキア王国執政となった。


これを同盟諸国に承認させることで、俺がアドリア海に進軍する為の大義名分を得る。


宗教力を弱めるのと同時にハプスブルク家の力も弱めるため、排除するための戦いにハプスブルク家から追い出されたバードリ・エルジェーベトを旗頭にする。


いささか説得力が弱い旗頭だが、それでも元領主が旗頭としているといないのでは大違いになると判断したからだ。


「バチカン攻めは後回し都市アドリア海出入り口の封鎖を最優先とする」


真田幸村、前田慶次、柳生宗矩を集めイタリア半島のブーツで例えると踵の部分になる半島を指さす。


「先方、この前田慶次が務めさせていただきます」


「真田幸村はシチリア島を攻めよ、その後ろを前田慶次、柳生宗矩隊が通過しオトラント海峡封鎖のためブリンディジを占領せよ」


と地図を見ながら命令すると、


「信海様と桃信様は?」


と、柳生宗矩が聞いてきた。


「信海は日本本国に戻す。俺の代わりにして貰わなければならない仕事があるからな。桃信はこのまま欧州イバラキ島で俺の元で働いて貰う」


そう命じて軍議が終わると信海は怒り心頭と言う顔で部屋にやってきた。

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