第649話 森坊丸の思い出
モナコの方角を見て数時間、周りの時は進み日が暮れていたが俺の時間は停止していた。
思考が停止していた。
いや、逆行というのに近いだろう。
森坊丸との思い出にふけっていた。
森三兄弟の次男、正確には森兄弟は四人で三男にあたる坊丸。
本能寺からの付き合いになる数少ない人物。
俺の小姓を務めていた期間は短く、弟の力丸が俺の与力に正式になるまでの期間だったが、安土の城での案内や剣術の稽古に付き合ってもらい、蘭丸を含めた森三兄弟とは長い付き合いだった。
森力丸は俺の側近中の側近で、常陸国を茶々達と一緒に守ってくれている。
坊丸は織田信長の直轄隊を率いて戦っていた。
その為、モナコに進軍していた訳なのだが、
「こんな戦いを始めてしまった、俺のせいだ・・・・・・」
と、一人つぶやいたら後ろから小突かれた。
俺を小突いてくるような人物は数人しかいない。
一撃と同時に、
「馬鹿か」
と、一言だけ俺に向かって言う人物は一人だけだ。
「の、信長様、来ていたのですか?」
と、振り返って言うと
「ああ、おそらく常陸が一人、自分の責任だと悲しんで苦しんでいるだろうと思ってな」
と、俺の心を見透かしている織田信長は続けて言う。
「常陸、坊丸も元々は本能寺で死ぬ身であった。だが、常陸が助けた。そして、坊丸は家族を持ち子を作る時を得た。今では立派な子供達が安土で働いている。坊丸は跡継ぎを残す事が出来たことを感謝していたぞ。だから、常陸が始めたこの戦いに率先して先方になりたいと申してモナコに向かったのだ」
時間がなく最近あまり話せていなかった坊丸の心の内を聞かされた。
俺は涙を夜空を見上げぐっと堪える。
「常陸、お前には報復の焼き討ちなど合わん。やめておけ」
「しかし、信長様、悪魔の兵器である毒ガスを使った神聖ローマ帝国連合軍に、次に使わせないくらいの脅しをしなければなりません」
「わかっておる。儂を誰だと思っている?第六天魔王ぞ。久々にその名前を使ってくれよう」
「信長様?」
織田信長もまたモナコの方角を見て鬼の形相をしていた。
1609年 秋
モナコと言う町は、織田信長艦隊の壮絶な艦砲射撃で町ごと消えた。
俺は、欧州イバラキ島の島民で宣教師に一通の手紙を持たせてバチカンに送った。
『毒ガスを再び使えば、パンドラの箱を開け二度とバチカンは、ローマは住めない土地にする』
と、書いた。
パンドラの箱伝わるかどうかは不明だが、脅し文句には良いだろう。
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