第648話 ヨーロッパ大陸戦

 ジブラルタル城からは絶えず連絡船が来る。


その連絡船はヨーロッパの大陸での戦況を知らせる内容で、同盟国のフランス王国軍と行動を共にしている前田利家軍の戦車隊が神聖ローマ帝国を主軸とした敵連合国に大打撃を与え、ベルギーのブリュッセルを占領したとの知らせだ。


同盟国のオスマン帝国もまた、ブルガリアとギリシャを支配下にしたと連絡が来る。


戦況は間違いなく有利に動いている。


地図を見ながら落としどころ、この戦の終わらせ方を考えながら悩んでいる。


欧州イバラキ島からバチカンのあるローマを攻め取るだけで良いのかと考えている。


政治への宗教力を薄くするための戦い。


聖地を占領してしまえば良いのか悪いのか・・・・・・。


平成のエルサレムを考えてしまうと聖地の占領は逆効果。


戦いが終わらなくなるのでは?


と、考えて数日、突如として悪魔の知らせは訪れた。


それは、モナコ付近に駐留していた森坊丸軍壊滅の知らせだった。


「なに、もう一度正確に事の次第を述べよ」


俺は連絡船の使者の言葉が信じられず聞き返した。


「はい、生き残った者の証言によりますと、東から弱い風が吹く深夜に突如、異臭がしたかと思うと皆、鼻や口がただれ咳き込み苦しんだあと、日が昇ると同時に敵の軍団が総攻撃をかけ攻めてきたとのこと。兵士達は弱っている所だったので応戦できずに壊滅、森伊豆守様、御討ち死に」


・・・・・・。


言葉が出ないでいる。


「坊丸が・・・・・・」


目を通していた書類をぐしゃぐしゃと握り爪が自分の掌に食い込み血が滲むくらいに力が入った。


不思議に痛くはない。


血が滲む掌を握って押さえてくれたのはアセナだった。


「おにいちゃん、ペロポネソス戦争を知っている?」


と、手を握りながらアセナは聞いてきたので、首を振る。俺はヨーロッパ史はあまり詳しくはない。


「太古の昔ペロポネソス戦争と言う戦いがあって、大量の火山から採取した硫黄を燃やして毒の霧を生み出し戦争に使ったと言う話しを聞いたことがあるの。もしかして、それでは?」


・・・・・・。


毒ガス・・・・・・。


意外にも古代戦争で使用されていると言うのは、色々な物語を読む中で見たことがあるが、それが使われている?


「くそ、追い詰められた敵は本当に何でも使ってくるな、くそ、くそ、くそ」


と、血の滲んだ手を机にたたきつけようとするとアセナは必死に押さえてくれた。


アセナが一杯の炭酸ジュースを差し出してきたので一気飲みをし、ゲプッと息をして一呼吸した。


不思議と落ち着く懐かしい匂いがするゲップで心が少し落ち着く。


「で、敵は?」


「はい、モナコを占領しています」


「欧州マイハマ城の柳生宗矩の戦艦・不動明王と前田慶次の戦艦・摩利支天をこちらに呼べ、モナコに艦砲射撃を行う。毒ガスを使えば町は火の海にすると見せしめてくれる。アセナ、オスマン帝国に使者を。進軍一時停止、相手は気化させた毒を使う。目に見えない兵器だと知らせてくれ」


アセナは部屋の外に控える側近にすぐに知らせていた。


俺は天守最上階よりモナコのほうを見て、静かに拝んだ。


「坊丸・・・・・・、すまん、俺のせいだ」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る