第645話 農政改革・ハウス栽培

「マコ~、寒くても作れる技術って未来にはないの?」


と、お江が聞いてくる。


「なくはないと言うか、日本だと一般的で夏の作物も冬に収穫出来るようになっているから季節など関係なしで、いろいろな食べ物は手に入るぞ。冬でも新鮮な胡瓜や茄子を食べられるからな」


「だったら、それやれば良いのに、設備費お金かかりそうだけど、今のうちの蔵の状況なら何でも作れると思うよ」


・・・・・・確かに俺の支配下の蔵は次から次に増築されている。


最近だと、重曹の大量生産を常陸国営技術開発研究製作所のガリレオ・ガリレイチームが作り上げたので、安い石鹸製造にも成功したため、その売り上げが入ってくる。


資金は潤沢にある。


なんなら造幣方奉行として、お金を発行し続ける手だってあるが、それはインフレの恐れが高いから考えないようにしよう。


「よし、常陸国営技術開発研究製作所の新事業としてハウス栽培を始めるか」


ガラスが手に入る段階で挑戦しておくべきだった事なのかも知れない。


ビニールは作れなくとも、ガラス天井で作るハウス栽培が出来る。


石炭を使って熱の管理だって出来る。


農政改革第二段。


建物の設計をする。


ガラスが手に入ると言っても高級品には変わりはないので、有効的に少量の使用で作らなければ、実用化出来る物にはならない。


そこで考えたのは、のこぎり屋根だ。


産業革命で考案されたこの屋根は、日の光を取り込むのには効果的だ。


そこに石炭ボイラーを設置する。


平たい板と板を合わせて作る建物は、うちでは大工衆が一ヶ月もあれば作り上げてしまう。


完成した南面だけガラスを使ったハウスに、先ずはトマトと大豆と芋を植えさせた。


トマトは育ちやすいからの採用で、大豆は栄養価から、芋は主食として考えると米や麦、蕎麦よりハウス栽培に適していると考えたからだ。


「御大将、農政改革と言ったら俺に任せてくださいよ」


と、城の改修で忙しいはずの真田幸村が買って出た。


今まで数々の土地で成果を出してきている真田幸村に任せるのが一番だと思い頼むこととした。


「しかし、御大将、建物の中で食物を育てるなど驚きなのですが」


「いや、未来だと普通の事なんだよ。気温に対しての調整が効くからな。作物だけでなく魚だって大きな水槽で育てるんだぞ」


「へぇ~、それは凄い。魚も池で人の手で増やせば、時化で漁が出来ないときに困りませんね。建物はちょっと作れないけど、池で少し試してみます」


「うん、頼んだ。資金面はお江が調整してくれているから相談してくれ」


「はい」


執務に戻ると、小滝が部屋に来て、


「あの~薬草栽培に私にも少しあの小屋を使わせて貰えないでしょぅか?」


「無論、良いとも。医薬品が高級品でなくなるようになれば民も喜ぶからな」


「はい、私もそう思って」


「幸村には命じるから美味く調整して作り始めてくれ」


「御主人様、なにか欲しい作物、薬草ありますか?」


と、聞いてくるので少し考える・・・・・・。


「あっ、ハッカを作ってくれ。ハッカの実から採れる油を使いたい」


「わかりました。栽培してみます。しかし、何に使えるのですか?」


「ハッカ油は万能なんだぞ。肩こりに腰痛に、虫除け、虫刺され、体臭消し、胃薬、あと度胸試し」


「度胸試し?」


「ハッカ油はスースーとするんだけど、それを金玉に塗る度胸試しを子供の頃に友達とやったなぁ~、亀の頭に付くとすっごいヒーハーしちゃうけど、はははははっ」


と、言うと小滝は困った顔を見せ理解に苦しんでいた。


「まっ、度胸試しは冗談として、虫除け効果があるから虫から感染する伝染病予防に使えるから」


「虫ってあのように小さいのに恐ろしいですね」


俺の高校生レベルの知識でしかないが虫から病気が感染する事を教えてある小滝は、ハッカ油の実用化、大量生産に向けて働き出した。


そう言えば蚊取り線香も作れなくないか・・・・・・除虫菊も栽培を頼んだ。

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