第642話 潜水艦

 サッサリ港城塞を欧州イバラキ城と名を改めることを皆に知らせ、一段落すると真田幸村が、


「御大将、こちらに見せたい物が御座います」


と、城塞の海につながった人工洞窟へと案内した。


そこには海水面すれすれに顔を覗かせる船が二隻係留されていた。


「これが敵の船か?」


「はい、厳重に守られていた船だそうです。俺達が勝手に触るよりは御大将に見せないとと思いそのままにしておきました」


静かな波に船体のほとんどが隠された船の引き上げを命じる。


全貌を確かめなければならない。


一見、沈みかけているような船にロープをかけ陸に引き上げると、鋭く尖った先端を持つ10メートルほどの小さな細長い船。いや、船ではない、間違いなく潜水艦だ。


足こぎパドル推進式と、オールを使って進めるように出来ている原始的な潜水艦。


魚雷を撃つ穴はなく、おそらく突進攻撃をすることが前提で作られているのが想像出来た。


「まるで、人間魚雷回天だな・・・・・・」


絶句してしまった。


相手は技術が進みすぎている俺の船に対して原始的突進攻撃を考えたのだから、昭和で言えば大日本帝国が技術力そして生産力に劣ったのを察すると特攻と言う命の武器を考え、平成時代は最先端軍事力を持つアメリカに対して自爆テロで攻撃する過激派イスラム教を彷彿と思い出させた。


「このような命を武器にするような国は、俺は断じて認めん」


と、怒鳴るとその声は人工洞窟に響いた。


俺が興奮して怒っているのをお江が静かに背中をなでて落ち着かせてくれた。


「その通りに御座います。我ら艦隊に真っ向からは勝てないのでこのような愚策を考えついたのでしょうが・・・・・・」


と、真田幸村も命の武器の愚策性をわかってくれていて安堵のため息が漏れた。


「命を捨てるような突撃は俺は許さぬからな、それだけは心してくれ」


「御意」


陸に揚げた潜水艦を船大工達に徹底的に調べさせ図面にしてもらう。


すると、やはりというのか欠陥が浮かび上がった。


そこで泳ぎが達者な素潜りが得意な者を選抜し、潜水試験をすると乗員を10名乗せ、水取り入れ口をあけると船底に水が入り沈む。そして、水深10メートルまで耐えて潜水して人力で前進した。


二度と自力では浮上出来ない構造。


構造的欠陥を持つ間違いなく人間魚雷潜水艦だった。


試験の終わりを知らせる小型爆雷で水中に合図すると兵士達は潜水艦に穴を開け乗り捨てて浮き上がってきた。


その構造に誰もが驚きを隠せずにいた。


そして、自分自身の目で確かめた俺自身もため息交じりに、


「宗教と自爆テロ・・・・・・いつの時代も変わらないのか・・・・・・」


と、つぶやき、改めて宗教の政治的影響力をなくす戦いに勝つことを心に誓った。

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