第630話 アセナの苦悩
オルマン帝国皇帝の妹アセナと旧神聖ローマ帝国軍の指揮官が娘オルショリャが俺の側室と言うのはいささか無理があるような気はしていたが、やはり二人は顔を会わせると渋い顔で黙りだった。
「おにいちゃん、なんで黒騎士の娘を側室にしたのよ」
と、寝床でアセナが不満を言ってきた。
「アセナ、悪いがそう言うのを寛容に受け入れて欲しいんだよ。昨日の敵は今日は味方、未来はわからないが敵同士のままなら未来もまた、敵同士である可能性が高い。それでは駄目なんだよ」
「おにいちゃん、私にはわからないわよ」
「そりゃ~わかってくれ、理解してくれって言うのは難しいのはわかっている。だが、地球なんて大きいように見えて小さい星、そこに生まれた人間同士がいがみ合う未来があると知ったらどうする?」
「・・・・・・小さな星?」
「広大な大地が広がっているように見えるが、人間が住むのに適しているのは、ほんの少しなんだよ。そこに住む為に敵対する民族、国、違う神を信じる者全てを殺すか?」
「それは・・・・・・」
「だから、まずは俺みたいな者がいろいろな民族や国の者と仲良くする意思があるのを示さねばならない」
「・・・・・・なんか、側室を次々迎える口実にしか聞こえないんですけど~」
と、ミライアはふくれっ面を見せていた。
「だろうな、側室ばかりと仲良くしているからそう見えてしまうが、知っているとおり俺が開設した学校は国や民族、信じる神、出身身分、肌の色、目の色、髪の色などで差別なく入学させている」
「うん、知ってる」
「アセナもそれをわかって欲しい。それにオスマン帝国の兵士を殺したのは黒騎士であってオルショリャではないだろ?それとも親の行いの責任を子供が背負うのか?そんなことを繰り返していたら、いつまでも敵対したまま」
「・・・・・・うん」
だんだん小さくなっていくアセナの返事はいろいろ考えている証拠、今日はこれ以上詰め込んでしまうと逆効果になると思い俺は枕元の灯りを消して
「今すぐわかろうとする必要はない。さあ、寝るぞ」
と、俺は難しい顔をしたままのアセナの頭をなでてあげ、眠りについた。
今は宗教対立、領土の拡大争いの最中、説得力には薄いが既存の物を一度壊せねばならない。
そして、壊した後に新秩序を作る・・・・・・。
織田信長が旧体制を打ち壊し新しい日本国家を作ろうと天下布武を掲げたように、俺はそれを地球規模で考えている。
平成でいつまでも続く民族対立が起きないよう、その形を作るため戦いをしている。
俺がいる時間線では同じ未来は作らせない。
それが俺の目標・・・・・・。
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