第621話 戦の狼煙・地獄の業火
1609年 春
ジブラルタル城下町では日本から持ち込んだ桜がほころびだしていた。
石造りの10メートルの高い塔を囲むかのように桜が淡いピンク色で染めている。
石造りの10メートルの高い塔はイスパニア帝国元国王フィリッペⅢ世を油揚げにした釜で天辺に備え付けられている。
油は毎日注がれ火は消えずにいた。
その塔の下では刑を待つ22人が待機している。
この公開処刑には大きな意味を持つ。
ハプスブルク家・バチカンなどの旧体制勢力を敵に回すという強い意味を持つ。
その為、各地に高札を出し公開処刑までの期日をとった。
案の定、世界各地から見物客が来ていた。
織田信長の外交手腕で同盟国となったイギリス帝国とフランス王国からは正式な使者が列席、また、俺が同盟の使者を送ったオスマン帝国からも同盟の締結の使者がそのまま処刑見物に列席した。
そして、マドリードから織田信長と前田利家も来ている。
「これより日本国豪州統制大将軍・インカ帝国執政・ジブラルタル藩藩主・安土幕府副将軍・造幣方奉行兼安土暦奉行兼南蛮交易総取締役奉行・平朝臣右大臣黒坂常陸守真琴の暗殺を企てた者達の処刑を行う」
俺が大きな声で民衆に叫ぶと、
「イスパニアを侵略した者が偉そうに」
「死ぬべきなのはお前だ」
などの批判的なヤジが飛ぶが、
「日本国の支配に変わって住みやすくなったから私は歓迎するわ」
「貧しい私達に教育をしてくれた黒坂常陸様のような下々の者に目を向けて政治をする者はいなかったわ」
「学ぶ機会を与えてくれ仕事までくれた領主など私は知らないわ」
などと、俺に好意的な声も飛び交う。
それを真田幸村が指示を出した兵士達を囲ませ沈ませる。
「これより罪状を言う。まず、罪もなき者を大量に殺めし者達を前に」
禁断の魔剤と呼ぶ自白剤を飲ませた元バードリ・エルジェーベトの使用人達5人彼たちは幻想の世界に意識は飛んでいる。
「ローマ法王の言う通りにジブラルタル城下町で人殺しをしろと命じられました。神よ、許してください」
「ローマ法王が私がジブラルタル城下町で人殺しをすることが神の思し召しだと言ったのです」
などと言うと民衆は、
「黒坂常陸が言わせているのだろう」
「どんな拷問をしたんだ」
などと声が出た。
想定済みだ。
地獄の業火の塔の中段まで登らせ下着だけを残し裸にさせる。
拷問の形跡など一切ない体を民衆に晒すと、騒いでいた民衆は静寂になった。
「見ての通り一切拷問などしていない、この者達は自ら罪を認めたのだ。次にこの一連の事件と一緒に俺の暗殺を企てた者達を」
と、塔の中段に登らせ同じく下着だけを残し裸にする。
戦士らしい筋肉質の体で同じく一切の拷問の傷がない体を晒し、
「俺を殺そうとした目的は?」
と、俺が問うと
「新大陸の支配がを取り戻したかったからです」
「イスパニアを我が物にしたかったからです」
「バチカンの敵、黒坂真琴は神をあざ笑う異端者、ローマ法王に殺すように命じられました」
「平民に教育するなど言語道断、平民など殺さないくらいに苦しめながら搾取するための道具、それを黒坂常陸は同じように扱って」
と、禁断の魔剤を飲ませてある者達は口にした。
「嘘だー、ローマ法王陛下がそのような事をするはずがない」
「そうだそうだ、ローマ法王陛下は民衆の幸せを願っている方、なにかの間違いだ」
との声が出始めた。
すると、
「大天使ミカエル様、彼らに御慈悲を」
「ガブリエル様、彼らを許してあげてください」
「ラファエル様がほらすぐそこで見ておられる」
幻想の世界を見ている17人は大天使の名を呼び慈悲をこうていた。
その姿に偽りが見えないのが、この禁断の魔剤の恐ろしい所だ。
集まった民衆は空を見上げていた。
そこに、細く裂いた竹で骨組みを作り和紙を貼った諸葛孔明が作ったとされる『天灯』を蒸留した高濃度のアルコールに火を付け一つ空に飛ばす。
「あっ、あれはなんだ?」
「神か?」
「天使か?」
と、民衆が騒ぎ出す。
そこで一人地獄の業火の刑を待つ者が、
「黒坂常陸様を殺そうとしたから神がお怒りなんだ」
と、言った。
勿論、薬で洗脳している。
見たこともない飛行物体が空を飛んでいる、それを一人が大きな声で「神だ」と、叫んでしまえば後は集団催眠効果で皆がそう見えてしまう。
平成時代、天体観測用の風船を見た者が「UFOだ」って叫んでしまえばみんながUFOだと信じてしまうのと一緒だ。
民衆が跪き天に向かって許しを請うている中、俺は、
「罪もなき人々を殺し、俺をおびき出し暗殺をしようとしたのは明白、私利私欲の為、安定しようとする平和を乱し民族主義、そして政治への宗教介入は絶対に許すまじ行為。世界は、地球は、地上は限りある物、それはこの地球に生まれた者全てが平等にそして恩恵を受け入れる権利がある物、それを犯そうとする者達、また今回の事件の首謀者、命令を出した者『神聖ローマ帝国皇帝・ルドルフⅡ世・ローマ法王パウロⅤ世・ハンガリー国王マーチャーシュⅡ世・トランスシルヴァニア公バートリ・ガーボル・モスクワ公・フョードル・イヴァンノヴィチ』である。この国々に対して、この者達を差し出すように命じる。本日の22人の煙が、この黒坂常陸の決意の狼煙、潔く渡さねば開戦の狼煙となる。とくと目に焼き付け世界に伝達せよ」
と、言うと、22人の油揚げの刑は執行された。
彼らは禁断の魔剤効果で自ら炎が燃えたぎる油に自ら入っていった。
それはまるで罪人を神が裁いているようであったと、後に噂で聞いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます