第616話 自白剤

「小滝、あれはできたか?」


ジブラルタル城の一角にある地下室は小滝の部屋となっている。そこは小滝専用の薬開発室となっている。


インカ帝国協力の下作った石造りの部屋は、うちの忍びも入ることが出来ないくらいにしてある。


ドアは左甚五郎作組木細工と、国友茂光作の南京錠を取り付けている。


その為、鍵を持っている俺と小滝しか入れない。


実際、猿飛佐助に忍び込むよう試させたがお手上げで悔しがっていた。


もともとは俺に精力を付けさせようとしていた小滝だったがそれが発展して医師レベルになっている。


植物を主原料とする漢方新薬開発をしている。


その小滝に俺はあの物を作らせている。


強盗などを犯して死刑が確定している犯罪者を実験台に使って。


倫理上いろいろ問題も多いので何と何を使ったかなどとは言えない代物。


ただ、平成でサイコパスな映画の代名詞と言えば人を食べてしまう博士なのだが、その博士がドラマ版では自白剤として使っている物で、また日本でも平成中期までは一部のぶっ飛んだ人が愛用していたキノコを主成分にしている。


それを小滝が他の原料と合わせてより強力な物を作り上げた。


「御主人様、これなら屈強な男でも意識だけが極楽に飛んだかのようになり何でもベラベラと話しますよ」


小滝の部屋のさらに下にある牢獄で死刑囚を使って実験をする。


椅子に縛られた筋肉隆々の強盗犯罪者に飲ませると、30分後、焦点が合わなくなり頭を軽く揺らしながら、


「おお、神よ。私を許してくれるというのか」


などと言い始めた。


幻想を見ている様子だ。


「全ての罪を話せば許す」


「何でも話しますぜ。セバーリャでは5人殺して金を奪いました。ジブラルタル城下では3人・・・・・・、ぐふぇふぇふぇふぇ、これで俺も天国だ~」


こちらで調べが付いていること以外もベラベラと話し始めていた。


ちなみに血抜き悪魔とは全く関係はない死刑囚。


自白剤の完成。


これを有効活用する。


勿論これだけを使うと冤罪だが、話したことを家臣に裏を取らせれば冤罪率は格段に下がる。


拷問で吐かせるよりは良い方法だと思っている。


中世ヨーロッパや江戸時代の自白の強要の拷問を俺はするつもりがない。


あれは知れば知るほど凄惨な物。


白であろうと黒だと必ず言いたくなる物だ。


科学捜査技術が発展していない以上は自白が犯罪証明に必要な事なのは理解しているが拷問はいけない。


石を抱かせたり、竹刀で叩きまくったり、爪に針を刺したり、爪をはがしたり、五寸釘を体に刺したり・・・・・・。


それよりは自白剤のが人道的ではないだろうか?


この薬を公表する気はない。


血抜き悪魔の為に使いたい。


屈強な強盗犯罪者がひとしきり全部を話して、ヘラヘラと笑っているのを見ながらそう思った。


でも、薬・・・・・・恐いな。


正しい使い方をしなければ危険だな。


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