第552話 インカ帝国とコカ

 町の中心にある城で歓迎の宴会が開かれた。


南米の料理が多く並ぶ中で、不思議な物があった。


それは葉っぱだ。


香草か何かなにかなのかと思い口に入れて噛む・・・・・・。


「うわ、なんだこれ」


申し訳ないが口から出すと、須佐が


「父上様、これはコカの葉にございます」


・・・・・・なんだかいろいろな人に怒られかねないキーワードが出た気がするが、平成時代でもコカの葉は嗜好品としてペルーやボリビアでは使われている。


合法の物だ。


日本国ではNG。


噛み煙草のような物や、コカの葉茶は有名だ。


そして、この時代、薬が発展していないこの文明の中では、痛み止めなどにも使われている。


間違った使い方さえしなければ良い植物だが、俺には口には合わない。


俺が知っている大好きな炭酸飲料も平成の終わりから100年ほど前までは原料の一つとして使われていたそうだ。


だから、コカ・●ーラなのだが。


イスパニア帝国もこの地を支配しようとしたとき、コカの葉の使用を禁止しようとしたらしいが、葉っぱの利用なら極めて濃度も低く依存性も少ないらしい。


が、・・・・・・。


「ファナ、コカの葉の取り扱いについては国としてちゃんと法を定めて取り扱ってくれ。禁止というのはしなくても、この葉の成分を濃縮したは絶対に作らせては駄目だ」


「コカは むかしから 使われていますが ヒタチさまがそう言うなら」


と、ファナ・ピルコワコは了承してくれた。


そこで後日、コカの葉利用に関しては厳しく制限する法を執政として発布した。


コカの葉茶、葉をそのまま噛み砕くは、OKとし、それ以外の使い方は厳しく制限する法度だ。


不思議がる者も多いが仕方がない事。


なんせ、あのコカインの原料なのだから。


ただ、植物はなんでも正しく使うなら必ずしも毒ではない。


アヘンの原料になってしまうケシだって花を愛でるなら良い。


それを正しく薬として使うなら、終末期医療の患者の負担軽減に使える。


日本だって、一部の種類の麻が取り締まれて伝統が消えようとしていたが、神社で正しく使うなら問題はない。


要は使う側が何に使う我が重要。


それは、なんにでも言えることだ。


包丁だって本来の使い方は「料理道具」だが、使う者が正しく使わなければ「凶器」となるのと一緒だ。


今は目の前にある葉っぱ。


うちの者達には、使用は禁止させた。


疑問に思う者がいなかったのは俺の直属家臣だからだろう。


そんな中、小滝は興味を持っていた。


「疲れにくく、食欲を減らし、恐怖心も減らす葉」


「小滝、それは脳を麻痺させているだけだから駄目な事だ」


と、教えると、小滝もコカの葉利用を諦めてくれた。


小滝は薬師として成長し続けている。


頼もしい。


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