第551話 インカ帝国・首都クスコ

 首都クスコ、予想を上回る巨石の壁を持つ城塞都市だった。


まるで巨人とでも戦うくらいに。


門はすでに開かれており、門前には整列した兵士、城壁の上では太鼓が叩かれ花びらが上から撒かれる完全な歓迎ムード。


佐助が俺の来城を先に通達しているからなのはわかるが、派手すぎる出迎えに笑うしかなかった。


そんな中、リャマに乗った黄金の装飾を身につけた少年が近づいてくる。


しかし、その黄金の装飾が・・・・・・変だ。


なんと言うか、インカの秘宝的ではない。


変な汗が噴き出す。


そう、俺が好む美少女が彫られた黄金の平たい大きな首飾りや、冠を着けている。


変わった案内人を出す物だな?と思っていると後ろにいたお初とお江が、


「真琴様、そっくり」


「ちっちゃくした、マコみたいだね」


と、言っている。


「そうか?俺に似ているか?」


と、近づいてくる少年は、リャマから降りると俺の馬の近くまで来て、片膝を付き、


「父上様にございますか?」


と、聞いてきた。


「ぬはっ、も、も、も、もしかして須佐か?」


「はい、父上様。須佐にございます」


その少年は、ファナ・ピルコワコとの子、須佐だ。


「やっぱりね」


「親子ですね」


と、お江とお初は納得している。


自分に似ているというのは自分自身気が付きにくい物だ。


そして、趣味嗜好も似ているのか?


大丈夫なのか?須佐。


俺も馬から下りて、


「大きく立派に育ったな。すまぬな、今まで来てやれなくて」


と、抱きしめた。


「父上様のこの国での御働きは聞いております。そして、その為に世界中を飛び回っていることも母上様から聞かされてます。どうかお気になさらないでください」


「それにしても、日本語上手いな」


「はい、伊達政宗殿が教えてくれます」


7歳にしては、しっかりとした須佐に驚いていると、後ろから


「イロハさんと 話しタイ だから、日本語 ひっしになって 覚えたのですヨ」


と、言うのはファナ・ピルコワコだった。


「母上様、そんなことは」


「そうか、そうか、好きな女と話したいからか、はははははっ」


語学を習得したいなら、その国の者と恋仲になれば習得するなどど昔聞いたことがあるが、どうやらそれは本当のようだった。


「おひさしぶりです。ヒタチさま」


「健康そうでなにより、そして、よく須佐をここまで育ててくれた。ありがとう」


初めて会ったときは美少年と思っていたファナ・ピルコワコだったが、大人の女性として美しく成長していた。


特に胸のあたりが。


↓インカ語(ラララ翻訳)

「皇帝陛下、歓迎の式典の準備が整いました。皆様をご案内致します」


と、側近らしき者が言ってきた。


「ヒタチさま こちらにどうぞ」


そう言って城塞都市の中に案内をされた。


紙一枚入らない巨石を組み上げる文化を持つインカ帝国。


イスパニア帝国支配で、折角の石造りの上に西洋の教会などが建てられてしまうのだが、どうやらクスコ奪還はその文化、建物が完成する前に再びインカ帝国の物となったので、インカ文明の色を色濃く残す建物が作られていた。


城塞都市として大きな石で町を囲んだのは、二度とイスパニア帝国に支配されることがないように守りを固める為に築いたとの事。


ちらほらち日本人の兵士も警備に当たっているが、それは伊達家から銃火器の支援を受けているからと言う事だった。


この城壁と日本国の銃火器があれば、ほぼ無敵。


二度と侵略を許すことはないだろう。


このままインカの伝統が残ることを願った。

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