第546話 伊達五郎八姫
「お初の方様、そのような目をされなくても」
と、伊達政宗が気が付くほど隣で恐い顔をしている、お初。
「うちの彩華と対して変わらない娘を側室に迎えよと、伊達殿はおっしゃられるのか?」
うん、俺も流石に10歳そこそこの子を側室に迎えるのは・・・・・・と、頭をかいていると、
「あははははははは、これはとんだ失礼を致しました。側室ではなく、御子息の嫁にいただいてはくられぬか?と、言う話しでして」
「御子息?」
「はい、須佐様です。インカ帝国皇帝ファナ・ピルコワコ陛下と常陸様との間の御子息の」
お初は顔を赤らめて早合点を申し訳なさそうに謝っていた。
「あぁ、須佐か、須佐ね、須佐か、ははははは」
俺も笑う。
「はい、五郎八は4つほど年上になりますが、意気投合しておりまして」
「ん?須佐と?」
「はい、時折、クスコに出向くので五郎八も連れて行ってます」
「なるほどね、もう顔合わせは出来ているんだね。手回しが良いな、政宗殿」
伊達政宗は俺と縁戚になることを企てた訳だな。
だが、本人同士が顔を見知っていて仲が良いなら反対する理由もない。
「では、貰っていただけますか?」
「幕府に婚姻の願いをお許しいただいて、御許可が貰えれば意義はないですよ」
「では、次の連絡船で使者を安土に行かせます」
と、伊達政宗は喜び顔で酒を勢いよく飲み干した。
「これで伊達家も安泰、いや~良き返事をいただけてこの上なく嬉しき限り」
酒をグビグビと飲み干す伊達政宗は途中で退席をしてしまった。
そして、俺は酔い冷ましに天守最上階から城下の町明かりを眺めていると、
「我が夫が醜態を晒しまして申し訳ありません」
と、伊達政宗の正室の愛が頭を下げきた。
「いや、今日ぐらいは良いのですよ。この城下を見れば政宗殿がどれだけ苦労を重ね働いていたかが、わかるから」
「ありがたきお言葉、夫はここを第二の故郷のように愛していますから」
「それは良かった。だけど、政宗殿は食道か胃を病むから、酒はほどほどに、そして煙草は吸わせぬように見張っていてください」
一説によると伊達政宗の死因は食道癌と言われている。
伊達政宗、酒にまつわるエピソードを多く残すとともに、愛煙家としても有名だ。
病気の引き金になっているかもしれない。
「はい、肝に銘じまして」
愛は天守から下がっていく。
俺は、インカと日本の建築様式が合体した町をしばらく眺めていた。
「良い町が出来た」
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