第543話 モアイ緑地化計画

石像が立つ殺伐とした絶海の孤島。


「御主人様、不思議な島ですね。このような巨石の像を作ったり運んだりするのに木が不可欠でしょうに、まったくないですね」


原住民が友好的だとわかると、下船しなかった小滝と桜子も上陸して漢方の原料になりそうな物はないかと散策していた小滝、そして、桜子、その二人をけいごするお江と紅常陸隊の兵士10人。


「木の実でもと思ったのですが」


「あ~この島は一説には石像を造ることに固執してしまって木々を無計画に伐ってしまい森が消えてしまった説と、鼠が大繁殖して木々を食べたり種子を食べたりして森が消えていった節があるんだよ」


「「説?」」


と、二人は首を傾げる。


あっ、大航海参入国家としては、俺達が初めて上陸したわけだから可笑しな言い回しになってしまったのに気が付くが、


「はいはい、触れてはいけない案件ですよ」


と、お初が言うと二人は納得して、それ以上は聞かなかった。


「御主人様、我が島から椰子などの苗木を持ち込んだらいかがでしょうか?デス」


と、ラララが言う。


「うん、それは良い考えだと思う。生活していくうえでは木々は必要不可欠、だからと言って日本国本土から持ち込むのもと思うから、ハワイ、ポリネシアのこの地域島々の木々を植えさせよう」


日本国から持ち込んでも育つ木々はあるだろうが、近しい島の植物のほうが適していると考える。


それをとりまとめ役の老人に伝えると、


「木々があれば船が造れ漁に出られます。大変有り難い」


と、ラララが通訳してくれる。


「マコ~、鼠が原因なら猫を持ち込んだら?にゃん」


と、お江が頭に両手で猫耳にして言う。


三十路になるのに可愛いな、お江。


だが、・・・・・・。


「それは駄目だな。猫は必ずしも鼠だけを食べるわけではない。今、この島に人が持ち込めば、その猫は意図しない物を食べ始め、生態系を壊してしまう」


日本でも、離島で幾度となく繰り返した鼬ごっこの例を知っている。


植物だって、セイタカアワタチソウや西洋タンポポの例をあげてしまえばキリがないが、そこはポリネシアと言う生態系内からの物とすれば気にすることはないだろう。


だが、落ち込むお江の頭をなでなでしながら、


「鼠退治は大切だぞ。それは、罠でやろう」


「お~、流石にマコ~」


と、変な感激をしている、お江。


船の食糧庫に設置してある板バネ式の鼠取りを分けてあげることにした。


船は自らが持ち込まなくても鼠が乗ってしまうから不思議だ。


その鼠はやはり不衛生なので原始的な板にバネの罠を仕掛けた物を設置してある。


ラララが使い方を伝授して渡すと大変感謝された。

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