第541話 上陸

 入り江も停泊すると、揺れが収まる。


嵐も少しずつ過ぎ去ろうとしていた。


次の日まで、上陸をせず入り江で休息をする。


船は襲撃に備えて厳戒態勢に入った。


いつでも砲撃が可能なように。


大航海時代、火縄銃に大砲を装備しながらも原住民に襲われ死んでしまった有名な船長などの話はある。


中には食べられてしまった者も珍しくはない。


念には念を入れる。


俺も小滝の漢方と桜子が作るお粥で体力の回復をはかる。


完全武装した真田幸村に任せれば大丈夫ではあろうが、臨機応変に対応するためには俺が上陸したい。


上陸の目的は水の補給だ。


食料には缶詰めもあるためまだ、余裕があるが水は腐りやすい。


そのため、補給を必要とする。


明くる日の朝、入り江から見える陸地には原住民らしき人だかりが見えていた。


しかし、不思議に槍や剣の類は見えない。


そのような文化がない島、そして、ラララが言った巨石像の文化がある島。


なんとなく、予想が付いた。


「みな、甲冑を着込め」


「え?ここの人々は武装していないように見えますよ」


「お初、それが油断だ。恐らく投石をしてくる」


投石、原始的な戦いに聞こえるが戦国時代の戦い方でも投石は一般的、中には投石の専門部隊があったなどの記述もあるくらいだ。


布の先に入れて遠心力で遠くに投げる。


そんな使い方をする。


意外に威力ある武器だ。


だが、甲冑を着込めば問題はないだろう。


鉄砲の弾をも弾き返す甲冑。


俺の家臣達に着用を義務付けている、和式愛闇幡型甲冑だ。


ア○ア○マンがたくさんいる状態になってしまうのは仕方がない。


その甲冑を着用した兵士30人これは最低限の者を選出する。


特に病にかかっていない事は重要、病気を持ち込んでしまえば、アメリカ大陸に病気を持ち込み流行らせた侵略者と一緒になる。


まぁ~、問診くらいしか出来ないが、熱はないか?下痢してないか?発疹はないか?


それを医学知識を持つ小滝が一人一人確認する。


そして、通訳のラララ、お初が、


「護衛ですから」


と、言う。


お江はこのようなときは空気を読み、船に残ると言う。


まぁ~お江の忍び、くノ一と言って良い体術なら、そこらの男なら軽々仕留める事も出来るだろうが、こういう時には我が儘を言わないのがお江だ。


「幸村、なにかあれば砲撃を命ずる」


「はっ、しかと」


小船に乗り換えて、砂浜に上陸するとやはり手には石を持った原住民が警戒威嚇しながら近づいてきた。


↓何語かは不明

「私達は、侵略しようとはしていません。ただ、水をわけていただきたい。こちらには、現インカ帝国皇帝の夫でインカ帝国執政の黒坂常陸守真琴様がおいでです」


と、ラララが話し始めた。

あとから、何を話したかは聞いた。

インカの海の民人の言葉だそうだ。


↓何語かは不明

「インカ帝国執政?インカを侵略者から解放した者?」


と、長老らしき者が近付いてくる。


↓何語かは不明

「はい、本物です」


↓何語かは不明

「皆、攻撃はいたすな。異形の姿の鉄を着る将軍、噂の者のようだ」


ラララはうちの代表的交易品の萌美少女が描かれた陶器の皿を差し出すと、長老は目をまん丸にしていた。


↓何語かは不明

「こ、こ、これはインカ帝国から送られた物と一緒だ!間違いない、侵略を嫌い島々と友好的に交易をしている国の将軍様だ」


萌美少女陶器が身分を証明する物になるとは思っていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る