第540話 嵐

 オーストラリアから南米大陸に向かう中、海が荒れ大雨が降る嵐にあった。


二・三日と思いきや、一週間ほど続いてしまう。


帆はしまい蒸気機関で進むのだが、波が高く外輪が浮いてしまい、上手く水をつかめないでいたのが長引く嵐からの脱出が出来ない要因の一つだった。


「御大将、島が見えます。このような嵐で沈むような船ではございませんが、一時的に避難をいたしましょう」


「う~、気持ちが悪い。仕方がない、避難する。ただし、原住民に歓迎されない可能性をぉぉぉぉ、おぇ~~~~~~~~」


ひさびさに三半規管が麻痺する。


船酔いを見かねた真田幸村と俺を介抱してくれるお初が決めたらしい。


俺だけでなく、紅常陸隊の嵐に慣れない船員もだいぶまいっているらしく、小滝が薬を煎じて配っていた。


「ラララを呼べ、おぇ~~~」


「真琴様、言いたいことはわかりました。ラララに島に入ったらすぐに通訳をさせたいのですね」


と、お初が背中をさすりながら言う。


俺は桶に顔を突っ込みながら頷く。


ラララは語学力が高くいろいろな語学を修得している。


近しい言葉でのコミュニケーションが取れる可能性が極めてたかい。


それにしても俺の側室達は船酔いに強いのが羨ましい。


ラララが部屋に来ると、


「確か、真琴様の地図が正確ならこのあたりの島は謎の巨石の像を作る島だったと思うデス。インカの民との交流があったので、通訳は可能かもしれませんデス」


と、言う。


巨石の像の島かぁ~、ん?


と、思いながら船は島の入り江に入った。


ちなみに、お江はと言うと、嵐の揺れが気持ちよいとマストに登り、


「おまたがヒューヒューする~」


と、喜んでいた。


お江は絶対に絶叫マシーンが好きなタイプだなと、呆れ顔で俺は見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る