第531話 正露丸開発と製薬工場

 茨城城に戻り、小糸と小滝姉妹を呼び出す。


この二人はうちの側室達の中で少々変わり種で、漢方の研究に熱心だ。


俺に精力剤を作る事がきっかけなのだが、今は健康管理もしてくれている。


医学の勉学に励んでいる。


「忙しいところ悪いのだが、とある薬を作って欲しい」


「えっと、一晩に何回も出来るようにするような薬ですか?」


と、小糸は言う。


バイ●グラはまだ必要ないから、額から変な汗が噴き出てしまったよ。


「そうではなくて、お腹の薬」


「お腹?」


小滝が首をかしげた。


「正露丸と言う薬を作って欲しい」


「名前を聞かされてもわからないのですが」


と言う、小糸。


そりゃそうだ、正露丸の名前は確か大正時代とかに付く名前のはずだ。


しばらく、製薬会社一社が登録している商標であったが、裁判で普通名称として認められたので、この場で「正露丸」と、大きく叫んでも問題がない。


正露丸の原料は木だ。


ブナなどの木を木炭にするときに出てくる液体を蒸溜させ出てきた油分が原料となる。


それを小糸と小滝に教える。


「そのような物が薬なのですか?」


「ああ、腹を下したときに良いし、魚に寄生する虫を弱体化させる効能もある。それに虫歯に詰めれば虫歯にも効くらしい」


・・・・・・効能で虫歯って書かれているのが昔気になり調べたのだが、虫歯に詰めて使うらしい。


あんな臭いのを虫歯に詰めるくなら歯医者に行くのを選ぶぞっと、子供心に思ったのを覚えている。


正露丸の殺菌作用で症状緩和させるらしいが。


それに俺は糖衣の愛用者だったので、歯には詰められない。


「主成分がわかるなら薬を作れます」


と、小糸と小滝は腕まくりをして作る気、満々だ。


「ただし、この薬は臭い。作るときも臭い。大変良く効くのだが臭い」


「御主人様はなぜに知っているのですか?」


と言う小糸に小滝が、


「姉様、それ触れてはいけない、聞いてはいけないというあれにあたりますよ」


そうだ、俺の発言の細かな内容を聞いてはいけないという暗黙の了解が存在している。


小糸が口に手を当ててしまった!と言う顔をしている。


「別に咎めたりするわけではないから良いんだよ。まあ、そのとりあえず、正露丸は臭い。よって作る場所は筑波山麓にある牧場に新設する。そこの責任者は小糸と小滝に任せる。ただし、俺が旅に出るときは片方には着いてきて貰いたいから情報を共有し合って上手く薬開発をしてくれ、良いな」


「はい」


「もちろんにございます」


筑波山麓には小さな城と呼んで良いような牧場を持っている。


奇しくもあの高山右近が作った牧場なのだが、そこを拡張して製薬工場を作る手配を始める。


漢方薬の原料栽培にも筑波山の下に広がる大地は畑としてちょうど良い。


この地を漢方研究をしている二人に任せる事とした。


正露丸らしき物はこの二人にとってはたやすい物だった。


あの独特の臭いがする臭い黒く丸い粒はすぐに作られた。


臭いからわかる。


正露丸だ。


・・・・・・山内一豊に送る。


「これを生魚の虫対策に使え」と、手紙を書き。


アニサキスを完治させるかは謎だが、効果は認められたとして薬に効能に書いて良いと平成時代ニュースで見たので、対策の一つにはなるだろう。


・・・・・・俺用にと見事な家紋の蒔絵が施された印籠に正露丸を詰めた物が用意されたが、これを腰に着けておくことは拒みたい。


と言うか、「この印籠が目に入らぬか」って出したら、目がしばしばする気がする。


鼻をつまんで涙が出てきそうな気がする。


正露丸は瓶詰めで臭いが漏れ出ないようにしておこう。


未来に変な伝承が残り、臭い印籠を持つ右大臣のドラマなどは見たくないからな。

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