第523話 柴田勝家死去

1605年2月3日


織田家筆頭家老、越中・能登・飛騨を領地とし安土幕府五大老の一人、柴田勝家死去の知らせを茨城城で受けた。


突如、厠で倒れそのまま帰らぬ人となったとのことだ。


越中の寒い厠は年老いた体にとどめを刺したのだろう。


柴田勝家とはあまり接点はないが、悔やみの使者を送ると同時に、柴田家から使者が来た。


しかも、三人。


一人は柴田勝政、一人は柴田勝豊、一人は柴田勝敏の使者。


一人ずつ会う。


それぞれの手紙の内容はほぼほぼ一緒だ。


柴田家の跡目相続の後ろ盾になってほしいと言うものだ。


柴田勝家には実子がおらず皆、養子だ。


跡目の遺言を残さずに死んでしまったのだろう。


そこで事実上幕府ナンバー2の俺を頼ってきたわけだ。


柴田宗家の跡目を継いで織田家筆頭家老、五大老の地位を手に入れたく俺を頼ってきた。


「御大将どうします?」


「力丸、他家の跡目相続にまでは口出しはしたくはない。この者達を良く知らないからな。しかし、口出しをしなければ戦になりかねない」


「はい、忍びからは軍備を整えているとか耳に入りました」


「戦はならん。ただ、俺が出張るのではなく、ここは幕府として将軍として信忠様に裁可を下して貰うのが幕府の力を示すのに良い機会、よってこの手紙は全て安土に送る」


「御大将の意見はつけないのですか?」


「俺が意見を出せばおもしろくない者も多かろう、幕府に任せる。但し、戦になりそうならすぐに動く」


「はっ、支度だけはしておきます」


俺は三人の使者の手紙を安土に送った。


俺は誰か一人に加担して後ろ盾になるつもりはなく、幕府にお任せする。と、添えて。


織田信忠は、柴田家を五大老から外し越中を柴田勝政・能登を柴田勝豊・飛騨を柴田勝敏に分配して相続させると裁可を下した。


悪くない裁可だと思う。


五大老の空いた席には、前田利家の嫡男で前田家を相続している前田利長が任命された。


領地の文化の発展が高く評価されたのと、俺との関係性、また、妻が織田信長の娘で有ることが理由なのは誰が見ても一目瞭然だ。


織田信忠は俺が口出ししなかった事が意外だったと、周囲に漏らしていた。


俺は俺でわきまえているつもりだ。


俺が聞かれもしないのに口出しをすればどちらが上だかがわからなくなる。


そのような事は避けたい。


安土幕府の安定的国家を俺は望んでいるのだから。


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