第520話 不思議水

 「御大将、我が領地と最上殿の領地の国境近くに珍しい水が湧き出していて、胃の腑の薬として良いとか言う物が領民から献上されました。是非とも日頃お疲れの御大将にいかがでしょうか?」


森力丸が瓶詰めにした珍しい水とやらを持ってきた。


よくよく聞くと、平成で言う福島県の奥只見で汲んだ水だそうだ。


「水が珍しいのか?」


「はい、私も飲みましたが、なにやらこう口の中に入るとジュワジュワとなるのです」


・・・・・・ジュワジュワ?は?え?もしかして・・・・・・


「それって炭酸水?」


「すみません、名前はわからないのですが」


そうだ、日本には自然の炭酸水があるんだよ。


有名所と言えば有馬温泉とか有名だった。


くぁ~しまった。この時代に来て炭酸を飲みたい場面がちょくちょく有ったのに、なぜにそれを忘れていた?


奥只見の炭酸水も平成時代度々福島に行っていて聞いたことあったのに・・・・・・。


すぐに目の前に運ばれて来た炭酸水をガラスで出来たコップに注いぐ。


「こっこの気泡はまさしく炭酸」


プツプツと白い気泡がコップの内側に付いている。


「ゴクゴクゴク、ぷはぁ~、ゲブっ、まさに炭酸水」


微炭酸だが炭酸水そのものだ。


茨城のソウルドリンク、ドクペを飲みたいと常々思っていた。


勿論、それを作るのは難しい。


なら、せめて炭酸水と思っていたが奥只見なら常陸から近いじゃん。


「あぁ、そんなに一気に飲んで、胃の腑の薬と言われているので大量に飲んでは」


と、力丸が止める。


「あぁ、これは炭酸ガスが水に溶け込んでいてこのように泡が出るんだよ。確かに炭酸水は胃を活性化させて食欲増進の効果もあるから「薬」と言われてもおかしくはないが特段飲み過ぎて体が悪くなる物でもないんだよ」


「ほ~そうなんですか?」


「炭酸が含まれる温泉とかも血流を良くしてくれて体に良いんだよ。未来で科学的に温泉の効能として証明されているのは炭酸ガスが含まれている物だしな」


「なるほど、この水で風呂ですか?」


「そうだ、人工的に作れるしな」


・・・・・・は?人工的に作れる・・・・・・。


自分で口に出して気が付くってなんなんだよ。


そうだよ、重曹とクエン酸を混ぜれば作れるんだよ。


重曹、今の日本の交易圏内なら手に入る。


間違いなく手に入るぞ。


あれ?だったらフルーツフレーバーを合わせたドクペって作ろうとすればできなくはないか?


ベリー系等のジュースに重曹とクエン酸を入れたら・・・・・・。


作れる可能性があるな。


よし、試してみるか。


「力丸、ありがとう。この炭酸水は枯渇しない程度に領民に迷惑にならない程度に汲んで茨城城に運ばせてくれ。輸送費など労働の対価はしっかり払う」


ドクペ開発まではこの微炭酸水で我慢だ。


はぁ~炭酸大好き。


・・・・・・ん?ヨーロッパも交易圏なのだからシャンパンってのも手に入らないかな?


あれって何年に開発されるんだっけなぁ~。


平成時代高校生だったから酒に興味がなかったからわからないのが残念。


俺のスマホが電子辞書でもダウンロードしてあるなら調べ物も出来ただろうに。


異世界転生物ラノベのようにスマホが使えたらどんなに便利だっただろうか。


そう思いながら、そろそろ限界が近いスマホを手に取り眺めた。


完全に壊れる前に封印して後世に残すことを検討しよう。


写真データ未来で見れたら、みんな驚くだろうな。

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