第518話 缶詰めの失敗?

 茨城城に帰城する。


今回は樺太からお土産が大量にある。


交易品として加工が盛んになった塩鮭や干した鱈、塩漬け数の子、そして蟹の缶詰め。


「茶々、土産があるぞ」


「あら、珍しい。なかなかそのような物、持って来なかったのに」


「まぁ~そう言うな」


日持ちする物が作れなければ持って帰れない。


今は数日で樺太と行き来出来るので冬場なら雪や氷を詰めて持ち帰る事も出来なくはないが、生物は少々心配がある。


食中毒を考えると加工品のが安全だ。


「何です?この金属の物は?」


「それか?それは中に蟹が入っている。缶詰めと言う方法で保存した物だ。これからは、この缶詰めを発展させるつもりだ」


「かんづめ?」


「まぁ、開けてみればわかる」


俺は缶切りで、蟹の缶詰めをあけて皿に蟹の身をだす。


「ん?あれ?身なんか黒くなってる?あれ?」


他も開けてみると身が黒い。


皿の蟹の身を崩す茶々。


「中身は蟹の色ですよ」


缶に触れていた身は変色している。


・・・・・・?


「あっ!蟹の缶詰めって身が紙にくるまっていたけどあれは変色を防ぐ為だったのか?」


「真琴様?」


「おそらくだが、蟹の身と缶が科学反応して変色したんだと思うから」


俺は解した蟹を食べる。


「うん、食べられるけど鉄っぽい味がするな、蟹の缶詰めは失敗だったかも」


「そうなんですか?残念です。しかし、この様に開けてすぐ食べられるなんて大変便利ですね」


「あぁ、缶詰めは新鮮な食品を密閉して加熱するから開けたときにそのまま食べられるんだよ。魚などは骨まで軟らかくなり食べられる。しかも、栄養が逃げないから万能な食品なんだよ」


「そうですか、これは発展させるべき技術ですよ」


「うむ、日本全国に缶詰め工場を作らせよう」


「はい、よろしいかと」 


「力丸、頼んだぞ」


細かな手配は力丸に任せる。


「ならば、まずは魚の缶詰めを作らせて安土に送ったほうが説得が早いかと」


現物があれば幕府を動かすためのプレゼンも早いわけだな。


全国に工場を作るとなると俺が好きに出来る領地ではない。


幕府からの指導の形を取らないと作れない。


「よし、鰯、鯖、鮭の缶詰めを作らせて幕府に献上せよ」


蟹の缶詰めは変色の失敗はしてしまったが、魚の缶詰めなら大丈夫だろう。


魚の缶詰めに紙が入っていたのは見たことがない。


あっ、水煮じゃなくオイル缶にしたほうが良いか?


いや、加熱しないニシンの缶詰めもなかったかな?


ん~まぁ~缶詰めの種類は後々考えよう。


防災国家を作る俺としてはまずは味よりも保存食の確立だろう。


味は作る者が工夫してくれれば良い。


缶詰めと言う物を知るのはまだ俺だけなのだから。


確かナポレオンが喜ぶん話があるのだから200年くらいあとの登場だったはずだ。


ナポレオンが喜ぶ前に織田信長が喜ぶようになるだろうな、これは。


細かい事は森力丸手配で作られた缶詰めが、安土に献上されると幕府の命令で工場建設が始まった。


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