第515話 樺太視察その6

 ポキビ城は樺太とロシア大陸との隔てる海峡の一番狭い所に建設された城だ。


樺太の防衛拠点。


陸路は敢えて作らず船でしか行けない。


少し辺境である。


ポツンと一軒家、レベルを超している。


理由は動物の保護。


樺太は北樺太は人間が生活するためには厳しすぎる土地だ。


そこを無理無理開発するのではなく、動物たちと住み分けをし保護する土地にした。


人間の勝手な侵略で多くの動物を絶滅に追いやる時間線を知っている俺だからこそわかる重要なことだ。


海から視察に出向くと、堅牢な城として完成していた。


陸地側は大きな空堀二つ・水堀が一つが、掘られ、動物の侵入を拒む作りとなり海に面している高台には砲台が無数に作られている。


「男利之介、ここにお前が常駐する必要はないが、度々訪れ自分の目でしっかりと管理せよ。謝っても陸地を耕そうとはするな。無理があることは無理だと認めよ。この城はあくまでも大陸から渡来する者を監視するための城であるからな」


「はい、父上様、しかし、大陸側に陣地を築いた方がよろしいのでは?」


「大陸は広すぎる。手を出せば泥沼になる。なら、この海で隔てている方が守る側としては良くはないか?」


「確かに広大な土地に城を築いたとしても、包囲されれば戦は不利になりますね」


「そういうことだ。今はまだ我が国の火器はずば抜けているが追々追いついてくる。そうなれば籠城戦などと言う事は出来なくなる。それは北条の者が一番知っているだろう」


小田原城の砲撃戦を知っている者はまだ生きている。


「父上様が変えられてしまった戦いですね。知っています」


「そうだ、だから海を渡ろうとする船に対して砲撃するのが守る側としては良いのだ。いずれこちらにも戦艦は配備するが間違っても領地を増やそうとはするな。現地の者と交易するのはかまわん」


「はい、父上様。交易を以て国を豊かにするでございますね」


「そういうことだ。須久之介と男利之介には樺太を拠点として、ここの半島まで続く島々の管理もせよ」


そう言って地図に書いた千島列島を示す。


カムチャツカ半島まで伸びる島々だ。


「結構広をございますね」


「そうだな、必要があれば砦も築いては良いが必ず幕府に届けを出せ。それと、生き物たちを絶滅するほど狩るようなことはするなよ」


「「はい、父上様」」


二人の返事が一際大きかった。


この二人に任せておけば大丈夫だろう。


ここの支配権を維持し続ける事は意外に大切だ。


豊富な海産物が採れる漁場であり、地下資源が豊富に眠っている土地。


平成ではソ連侵攻により実効支配されてしまっている土地。


平成の若者はあんな北の辺境の土地そんなに大事?っと思う者も多数いるのは知っているが、それは政府のアピール不足な気もする。


石炭・天然ガス・レアメタル、そして豊富な海産物の漁場。


ここで日本国が自由に漁が出来るなら蟹はもっとお手頃価格なはずだ。


よく温泉宿のバイキングなどで出ている蟹食べ放題の蟹は、大概はロシア産の冷凍品なのだ。


オホーツク海で採れた蟹を日本人は喜んで食べている。


それが北方領土近くの蟹だとも知らずに。


蟹はおまけに近い物だが、島々の領土は意外と大切なのだ。


今からしっかりと支配しておけば、未来で領土問題も起きにくいだろう。


そう考えながら雪の舞い散る海峡を北に抜け樺太島を一周海から視察して港に戻った。


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