第513話 樺太視察その4
樺太城の門前では鶴美と須久那丸、アイヌ民の族長の娘で俺の側室のトゥルックと俺の次男・男利王が出迎えてくれた。
流石に12歳13歳、隠れるようなことはせず凜々しく背筋をピンと伸ばし顔をしっかり見せた後、深々とお辞儀をして
「「父上様、ようこそ樺太においでくださいました」」
と、二人が声を揃えて言っている。
練習したのだろう。
「うむ、出迎えご苦労。皆健康のようだな」
「はい、皆息災にございます」
と、鶴美が左腕にひっついてくる。
鶴美がひっつくと右腕にはライバル意識を燃やしキャラの被るお江が右腕にしがみついた。
何歳になってもキャラブレがない。
「真琴様、お久しぶりにございます」
と、トゥルックの日本語が上達していた。
「おお、すまぬな。なかなか来られなくて」
「噂は耳に届いてますよ。たんとも海の向こうの大地を取り崩して来たとか」
「まあ、そのようなところだ」
「御主人様、ここでは寒いでしょうから城の中へ」
と、鶴美が言ってくる。
確かに樺太はもう寒い北風がビュービューと吹いているが二人にくっつかれているので暖かいが、立ち話を続けるわけもなく城に入った。
大広間で改めて挨拶を受ける。
「父上様、今回はゆっくりされるのでしょうか?」
「須久那丸、今回もそうそうはな。そうだ、今回はお前達二人を元服させるために来た。須久那丸は北条の正式な当主として、男利王はアイヌ民を束ね、北条との架け橋になるように務めるべく元服を行う」
「はい、父上様」
「北条との架け橋・・・・・・」
「烏帽子親に森力丸を連れてきておる。須久那丸は従五位下樺太守となるよう幕府よりの許しもいただいた。これで晴れて北条の樺太藩の正式な当主ぞ。そして、男利王は俺からアイヌ民筆頭奉行を命じアイヌ民をまとめよ。そして北条家の家老、ポキビ城城主を命じる。弟が当主と兄が家来という形になるが、二人ならそのような格式張ったことがなく、この樺太を繁栄させてくれると信じておる」
「はい、父上様」
「もちろんにございます。父上様」
「うん、良い返事だ」
須久那丸と男利王はアイコンタクトをして二人で頷いていた。
兄弟仲良くしてくれているのだろう。
父親らしいことはしてこなかったが嬉しい限りだ。
「父上様、良かったら僕たちに剣術を教えていただけないでしょうか?」
「おっ、いいぞ、教えてやる。二人とも庭に出なさい」
庭で二人相手に剣術の手ほどきをしようとすると、二人が連携して打ち込んでくる。
しかも、息が絶妙の加減で合っている。
なかなか、手強く俺の方が息が上がってしまいそうになるくらいだった。
「これ、二人とも、お父上様は旅のお疲れもあるのだからその辺に」
と、鶴美が30分ほどで止めてくれなかったら、一本取られていたかもしれない。
末恐ろしい二人だ。
「いや、驚いた。よくよく鍛えているのだな」
「はい、森で熊や狼に出くわしたときにおくれを取るようなことがないように鍛えております。父上様が昔、人食い熊を退治した話しを聞いておりますので」
「うん、そうか、偉いぞ。銃火器が発展しようとも剣術は心身ともに鍛えるのには良いことだ。これからも励むように」
「「はい」」
双子でもない、母親も違う二人だが息が良く合うコンビになっていて俺は本当に嬉しかった。
流した汗を三人で温泉で流す。
「どれ、ここも成長したか?」
「ぎゃーーーー、やめてーーーー」
と、須久那丸。
「父上様、前もそれやりましたよね。自分で剥いて洗えますから」
と、男利王。
うん、二人のあそこも少し成長していたようだ。
ははははは。
男親なんて、そんな冗談でもしないとこの年代は心の距離が開いてしまうからな。
このくらいふざける方が良いのだ。
「毛生えたか?」
「だから、見ないでください」
楽しい風呂だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます