第512話 樺太視察その3

 1604年11月初旬


雪がチラつくなか、樺太島留多加港へと入港する。


港は以前より建物が増えている。


「右大臣様、ようこそおいでくださいました」


と、守備に着いている北条の兵士が出迎えた。


「出迎え、大儀。港の建物が増えているがあれは何か?」


ドーム型の建物を積極的に採用している中、一際大きなドーム型の建物が10近くある。


「はい、あれは蔵に御座います。本州から届いた穀物やらが入っておりまして」


中を見させてもらうと確かに米や麦、乾燥した蕎麦やとうもろこしなどぎっしりと詰まっていた。


出荷用の蔵には乾燥させた魚や昆布、熊の毛皮などが入っている。


しかし、蔵にこのドーム型建築術は適してはいないんだよな。そこで新たな提案をする。


「アーチ式の建物にしてはどうか?」


トンネル状のような天井が丸い建物だ。


これも、雪や風に強く耐震性もある。


中に柱を使わないので蔵にはもってこいだ。


絵図面にして渡すと、


「お~なるほど、このような建て方もあるのですね。すぐに手配いたしまして、小型の物から試験的に作ってみましょう」


と、言う。


ここの大工衆には俺の家臣の大工衆・左甚五郎の愛弟子もいるため問題なく作れるだろう。


改めて思うが地震大国であり、台風大国である日本でなぜにドーム型やアーチ型の住居、建物が発展しなかったのかが不思議だ。


平成でも、その性能は折り紙付きなのだが、なかなか世間一般的には広まらない。


建築資材も企画が決まれば大量生産で、安く建てられると思うのだが。


「さあ、ここは寒いのでお城のほうへ」


森力丸は俺の今の提案をメモしていた。


「なかなか、その時、必要な時にならないと何が便利で有効に使えるのかわからなくてな」


「御大将、それは仕方がない事にこざいますよ。しかし、この工法なら確かに大きな物が作れますので、常陸や下野、下総にも作りましょう」


蔵や工房、作業場に適しているし、屋内を小分けの部屋にすれば集合住宅にも使える。


しかも、現在の常陸の工業力なら鉄筋も作れる。


規格化すれば大量生産も出来る。


新たな住宅の誕生だ。


日本の住宅事情を大きく変えてしまっているが、耐震性、耐積雪性、耐風性能に優れた住宅が増えるのは悪いことではないだろうか?


そう一人思いながら城に向かった。

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